トランプ勝利は米国社会の病弊を映し出した 勝利後に「団結」をアピールも、分断は深刻化

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大統領選と同時に行われた上下両院選挙でも共和党が現状どおり多数派を占めた。投票日前夜、トランプはニューハンプシャー州マンチェスターの巨大アリーナで「雇用を取り戻す! NAFTA(北米自由貿易協定)を再交渉し、TPP(環太平洋経済連携協定)を廃案にする!」と連呼。自分を勝利に導いたブルーカラー層の支持に応えるべく、自由貿易協定の見直しに乗り出すのは必至だ。

大きな山を動かしたのは、景気回復から取り残され、トランプの姿に白馬の騎士を重ね合わせた白人ブルーカラー層のやり場のない怒りだ。米調査会社センティア・リサーチによると、1996年から2014年の間、高卒白人男性の1人当たり収入は9%減少する一方、大卒白人男性の収入は23%増加した。

「富裕層がより豊かになっているにもかかわらず、自分たちのパイの取り分がないと不満に思っていた人たちに、トランプのメッセージはパワフルに響いた」と、ジェノビースは分析する。

従来の投票傾向が通用しなかった

ニュージャージー州の長期失業者支援団体「ネイバーズ・ヘルピング・ネイバーズUSA(NhNUSA)」の創始者兼代表のジョン・R・ファガジーは、「グローバル化とテクノロジーが雇用や収入に影響を及ぼし、自由貿易への反発を招いた」と言う。

「トランプ勝利」を事前にメディアが予想できなかった理由として、従来の投票傾向が今回は反転したことが挙げられる。

民主党の支持層であるブルーカラー層が、かなりの割合でトランプに流れた。大票田のオハイオをはじめ、中西部のラストベルト(旧工業地帯)を次々と制覇。クリントンは、東海岸と西海岸の、大都市を含んだリベラル派の州は押さえたが、トランプは、フロリダ、ノースカロライナ、ウィスコンシンなど、世論調査でクリントンがリードしていた州も勝ち取った。

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