SNSにはまりやすい中国人気質
私の仮説ですが、ソーシャル・ネットワーキングはもともと人脈づくりの大好きな中国人の嗜好によく合うもののような気がします。加えて、中国人には以下のような、SNSにはまりやすい特質があると思います。
① 見せたがり文化:中国人は素朴で大らかです。個人情報へのガードも低く、「見られても気にしない」というよりも、むしろ「こんなにすごい私にもっと注目して」という姿勢の人が多いと感じます。ですから、不特定多数に見られてしまうSNSのプロフィール欄や自分のページにプライベートな写真を平気でアップしています。
たとえば、中国語で「臭美」と表現する、ちょっと気取った自分撮り写真をブログにアップする行為は、男女を問わず「90后」(1990年以降生まれ)の若者の間で流行っています。写真のレタッチ用には「美图秀秀」などのアプリが使われます。また、「百度魔图」というアプリは、自分の顔写真に似たスターを探し出して「類似度」を表示してくれます。他人に褒められてうれしがる若者たちは、古い世代に見られた「メンツが立つ喜び」の文化を確実に受け継いでいます。
② 転載文化:もともと中国のメディアでは新聞や雑誌のオリジナル記事を別の媒体に転載することが許されています。その結果、中国人の間では「面白いニュースや有用な記事を見つけたらすぐに友人に転送する」ことが、当たり前に行われています。特に、大衆受けするスキャンダルは即座に転送されて広まります。たとえば、一時「微博」で私腹を肥やす役人を懲らしめるために車や腕時計の写真を撮って、「この役人は150万円のロレックスを身に付けている」などと摘発することが頻繁に行われました。
③ おせっかい文化:中国の人は親切です。「これは皆のためになる情報だから」として健康管理や理財や教育に関する情報を頻繁に転送してくる人も多く、特に長文の中国語だと読むのも大変ですから、ちょっと迷惑してしまいます。微信の場合、「朋友圈」に登録しているのはごく親しい友人だけですから心が痛みますが、どうでもよい情報ばかりアップしてくる人は「加入黑名单」(ブラックリストに入れる)機能を使ってブロックすることができます。
一方、有益な情報も転送されてきます。たとえば、今年の父の日を前にしたオバマ大統領のスピーチの英語原文と中国語訳は多数の友人から私に送られてきました。確かに、自らの体験を基によき父親たることの大切さを説いたこのスピーチは、いかにもアメリカの大統領らしい正直で心温まるものでした。
広告やブランド戦略に欠かせないピース
現在、中国市場におけるマーケティング・コミュニケーションやブランドイメージ構築にソーシャルメディアは欠かせないピースになっています。LINEと違って、微信では企業公式アカウントが無料で開設できますから、そこにフォロアーを誘導できれば1対1のコミュニケーションに持ち込むことができます。「微博(中国版Twitter)で情報を広め、微信で個人とつながる」のが、今時の中国の若者へのアプローチ法です。消費者に自分から企業アカウントにアクセスしてもらうための動機づけや仕組みをどう設計するか、そこがいちばんの頭の使いどころとなっているのです。
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