「トランプ大統領」で円ドル相場はどう進むか 新大統領の顔色をうかがう未曾有のゲームに

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ちなみに為替市場ではクリントン氏勝利のケースでは、財務長官に米連邦公開市場委員会(FOMC)の現メンバーでハト派筆頭格となるブレイナードFRB理事が指名されるのではないかと囁かれ、注目されていた。この点、トランプ政権における財務長官人事は選挙対策財務責任者のスティーブン・ムニューチン氏などが囁かれているが、それほど注目はされていない。上述したように、他ならぬ大統領自身がドル安志向をあらわにする人物像であれば、閣僚人事は二の次になる。

米通貨政策はそもそも「ドル高に不寛容」

ただ、重要なことは米財務省の通貨政策に関しては、為替政策報告書の「監視リスト」作成などの動きに象徴されるように、選挙以前から一方的なドル高相場に対して警戒感が示されてきた経緯がある。

要するに、大統領や財務長官という政治的かつ、属人的な要素以前に、米通貨政策は「ドル高に不寛容」という事実があったことを忘れてはならない。既に述べたように、過去2年半のドル高の調整が全く進んでおらず、それが米国の実体経済を蝕んでいるという懸念が米国の政策当局の中にも漂っているのではないかと思われる。

現状、トランプ大統領に関しては分からないことが多過ぎるため、語れることが少ないのが実情である。だが、為替予想を立てる上では、「ドル相場は上がったまま調整していない」、「トランプ氏はドル安志向が強い」、「米財務省の通貨政策はドル安方向に傾斜している」、といった確実に言える要因がどうしても目に付いてくる。

未だに色々なことが不確定であるにせよ、これから2017年にかけてのドル円相場は、年内に100円割れが定着した後、90円台前半を主戦場とする展開へ移っていくというのが筆者の抱くメインシナリオである。

 

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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