QE3縮小のスピードに市場は順応できるか FOMCの「宿題」は、出口戦略の見直し

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なおQE3縮小のパスを声明文に盛り込まず、記者会見で説明した理由を問われた議長は、(1)QE3の将来的なパスを公表することは政策変更に当たらないことと、(2)声明文という限られたスペースでは背景説明が不足することの2点を挙げた。(2)の問題については、今回の丁寧な説明によって対応が済んだと考えると、早ければ7月会合の声明文で、QE3縮小の見通しが示されることになろう。

QE3停止の新たな閾値「失業率7%」

一方、(1)については、QE3の運営が経済見通し次第であることと関連する。FOMCの見通しを見てくれれば、いつの時点でQE3が変更されるかはうかがい知れよう、ということだろう。しかし最初に触れたように、どんな条件が整えばいいのか、具体的なことはこれまで分からなかった。

バーナンキ議長は今回の記者会見で、「QE3終了時には、失業率は7%近傍にあり、堅調な経済成長がさらなる雇用増加を支え、QE3を初めて公表した頃の失業率が8.1%だったことと比べれば大幅に改善していることになろう」と解説した。QE3導入後ようやく、「雇用見通しの大幅な改善」とは何かが具体的に示されたのである。QE3停止の閾値として「7%の失業率」が採用されたと考えれば分かり易い。

FOMC参加者らによる経済見通し(Summery of Economic Projections、SEP)をみると、昨年9月の時点と比べて失業率がこの閾値に到達する時期は着実に近づいている。SEPでは各年第4四半期の予測値しか示されていないが、SEPを元に失業率が7%という水準に達する時期を探ってみると、昨年9月時点には「2014年第3四半期~2015年第3四半期」だったが、今回は「2014年上期」へと大きく早まっており、かつ期間のばらつき度合い(つまり不透明感)も1年間から半年へと小さくなっている。

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