ヒラリー勝利なら日本株はどこまで上がるか 米大統領戦後の日米の株価はどうなるのか

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では、日本株はどうなるだろうか。テクニカル面を中心に見ていこう。10月の日経平均株価は9月に比べ1000円近くも値を戻し、率で言えば6%近くも反発した。だが、海外勢が買い越し基調に転じたといえ、東証1部売買代金は1日当たり2兆円台を下回る薄商いが続いている。

そんななか、3つのテクニカル指標をみると、一部に短期的な過熱がみてとれるので参考にしてほしい。過熱がある場合は、相場は沈静化の方向に向かうことが多い。

まず、「騰落レシオ」。これは過熱している。これは値上がりした銘柄数を値下がりした銘柄数で割ったもので、市場全体(東証1部)の買われすぎや売られすぎを示す指標の一つ。25日間で計算されることが多いが、足元では過熱圏(120~140%)で推移しており、いったん下落する可能性もある。

次に、移動平均線のかい離率。2016年の日経平均株価の25日線(短期線)は、平均線から+5%~+6%水準に達すると、上げが一服している。10月下旬の日経平均株価は1万7400円台まで戻りを強め、25日線+3%超となっていた。

さらに、サイコロジカルラインで見ても直近までは過熱していた。これは12営業日のなかで日経平均株価の上昇日数が9営業日を超えた場合、市場全体が買われ過ぎとみなす指標だ。11月8日の時点では過熱とまではいかなものの、10月28日の日経平均は12営業日のうち9営業日上昇に達していた。

日経平均株価は11月4日、一時1万6800円台まで急落した。トランプリスクの台頭をきっかけにいったん利益確定売りに押されたわけだが、テクニカル面からは過熱感もあったわけで、しかるべき調整だったともいえる。

一方、国内主要企業の4-9月期決算の発表がたけなわだ。8日には日本最大の企業であるトヨタ自動車が決算を発表した。同社の今2017年3月期の連結純利益(米国会計基準)は1.55兆円(前期比33%減)になる見通しだ。減益ではあるが、従来予想から減益幅が1000億円程度縮小。理由は円高一服に加え、原価低減が奏功したようだ。また、時価総額が20兆円近いトヨタが自社株買いも発表した。発行済み株式の1.3%にあたる4000万株(2000億円)を上限とし、需給の引き締まりが好感されそうだ。トヨタの上方修正は相場の下支え材料になる。

米国株の堅調などから日経平均は底堅い展開に

今後のスケジュールを見ると、11月14日には7-9月のGDP一次速報値、19日~20日にはAPEC首脳会議が控える。また24日には米感謝祭を迎え、年末商戦が本格化していく。

米国株は例年11~12月のパフォーマンスが好調だ。米国株との連動性が高い日本株も、国内企業業績の下振れ懸念はある程度織り込まれ、年内は企業業績の改善や、米利上げ期待から来る円安が下支えしそうだ。当面は短期テクニカル指標の一部の沈静化もうかがいつつ、日経平均株価は200日線(約1万6600円)が下値の水準として意識されそうだ。

中村 克彦 みずほ証券 シニアテクニカルアナリスト

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なかむら かつひこ / Katsuhiko Nakamura

IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA)、日本テクニカルアナリスト協会(NTAA)評議員。

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