低視聴率が続くフジテレビ、打開策はあるか グループ他企業はむしろ好調だが・・・

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要因はまず、放送事業においてフジテレビの見込みを引き下げたことだ。

10月の販売状況から下期のタイム広告の予想を引き下げ、同じくスポット広告も視聴率が計画に届かず引き下げた。そのため、番組制作費は通期で数%引き下げるとした計画からさらに絞り込むが、それでも営業利益で25億円の下方修正となった。

一方で、都市開発は下期も大幅な伸びを見込む。サンケイビルはビルや住宅事業の好調、資産売却もあり、営業利益で20億円の上方修正とした。そのほか、映像音楽事業やディノス・セシールも利益を上積みし、フジテレビの引き下げ分をカバーする形だ。

やっぱり厳しい、フジテレビの視聴率

フジテレビ以外の事業の営業益は今期末で合計197億円を見込む。これは過去最高だ。嘉納社長は「中期的には250億円の営業利益を目指したい。フジテレビが厳しいときにほかの事業でカバーする、目指すポートフォリオができてきた」と語った。確かにその通りだろう。

ただ、周辺事業が好調なだけに、フジテレビの不調が余計に目立ってしまう。今年1~9月の視聴率を見ると、ゴールデン帯(19~22時)は8.1%と前年同期の9.3%から大幅に下落。TBSテレビ(9.7%)との差は拡大し、テレビ東京(6.6%)が背後に迫っている。

4月に生放送中心の編成にしたことで、昼のバラエティ「バイキング」やその後の情報番組「直撃LIVE グッデイ!」の視聴率は改善基調にあるというが、復権を目指すドラマはどうにも視聴率が上がらない。日枝久会長は5月の決算説明会で「もう1~2改編でボトムから上がっていく兆候が出てくる」と語っていたが、その兆候はいまだ見られない。

都市開発など周辺事業が好調なうちに視聴率を改善できるのか。苦闘が続くフジテレビだが、いまだ有効な手を見出すことができていない。かつて隆盛を誇った王者の危機的状況は、まだしばらく続きそうだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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