「相対的貧困」の子が教育困難校に集まる現実 「ひとり親」家庭で世代間の負が再生産される

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一方、少数ながら学校の式典にふさわしい服装とたたずまいで参加している保護者たちがいる。ふるまいや言葉から、常識と知性が伺われ、子どもが卒業できた安心感もにじみ出ている。この人たちは、ほとんど第3タイプの生徒、つまり「不登校系」生徒の保護者だ。

実は、この保護者たちも、学校制度には大いに不満を持っている。子供が不登校になった直接の原因は、同じ学校の生徒か教師の言動だ。その言動が生じた背景をさらに分析すると、その陰には家庭の経済状況や本人の個性の問題がある場合も多い。しかし、保護者はそれらを解決する方向より、学校や教師を批判することで、自らの無力感を抑え、プライドを守ろうとしてきた。

小・中学校で不登校を経験しても、家庭に経済力があって、家庭教師を頼んだり、学習塾に行くことができれば、学年に見合った学力をつけることも可能だ。そのうえで、高校進学の際に私立高校を受験するという方法もある。大学進学のための特進コースの学費が払えれば、どんな受験生でも合格できるコースを持ち、幅広く受験生を集め、合格者の学力に幅のある中堅以下の私立高校に進学するほうが、何かと評判の悪い公立の「教育困難校」に進学するより「人聞きが良い」と思う保護者も多い。そこで、公立「教育困難校」には、経済的に恵まれない不登校の生徒が集まることになる。

母子家庭・父子家庭の多さ

そして、すべてのタイプに共通するのは、母子家庭・父子家庭の多さである。昨今では、高校・大学の入学式・卒業式に両親が出席することは珍しくない。しかし、それらは受験偏差値の高い高校・大学に限ったことであり、「教育困難校」ではそもそも両親がそろっている家庭が少数派だ。両親はいるようだが、高校3年間に何度も苗字が変わることもある。保護者が祖父母や叔父・叔母、成人した兄弟・姉妹、児童福祉施設職員となっている生徒もいる。これらからは複雑な成育歴と家庭環境が透けて見える。

現在の日本では、子どもの6人に1人が「相対的貧困」の状態にあり、ひとり親家庭の相対的貧困率は54.6%に及ぶといわれている(内閣府「平成27年版 子ども・若者白書(全体版)」より)。現場に身を置いていた筆者の感覚からすると、ごくまれな場合を除いて、この「相対的貧困」層の子どもたちが、「教育困難校」に入学すると言っても過言ではないように思う。「教育困難校」の卒業式では、親子関係とともに日本の「相対的貧困」の実情がわかるのだ。そして、同じタイプの親が同じタイプの子を再生産する姿が明らかに見えてくる。

朝比奈 なを 教育ジャーナリスト

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あさひな なを / Nao Asahina

筑波大学大学院教育研究科修了。教育学修士。公立高校の地歴・公民科教諭として約20年間勤務し、教科指導、進路指導、高大接続を研究テーマとする。早期退職後、大学非常勤講師、公立教育センターでの教育相談、高校生・保護者対象の講演等幅広い教育活動に従事。おもな著書に『置き去りにされた高校生たち』(学事出版)、『ルポ教育困難校』『教員という仕事』(ともに朝日新書)などがある。

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