糸井重里「ブラック企業が生まれる理由」 糸井さんと、これからの働き方を考えてみた(下)
――糸井さんが「つらい」と感じられるときは、どういうときですか。
うまくいかないとき。でも、だんだんとそれは減ってきています。あんまり当てにしなくなったから、いろんなことを。
――当てにしない?
一足飛びに期待すると、つらいことが多くなるんです。ちょびっとだけ期待するのがコツ。ハードルを上げすぎても飛べっこありませんから。高すぎず、低すぎず、的確に上げられるのがいちばんいいでしょうね。
――それは自分に対しても、他人に対しても、両方ということですか。
そうです。人には優しいけれども、自分に厳しい人って案外、いっぱいいるんですよね。でも、それはダメですね。
だから、ぼくもラクをするし、つらいところは「つらい」と言いながらやる。そういうときはハードルを低めに設定します。そして、だんだん力がたまってきたら、ピョーン!と飛びたくなるから、そのときに楽しく飛べばいいんです。
ブラック企業と「楽しさ」
――最近、ブラック企業が話題になっていますが、「楽しさ」という要素がまったく出てきません。
ブラック企業って、あれ、なんなんでしょう。その言葉、すごい流行りましたよねえ。
――異様に流行ってますね。
デザイン事務所は全部ブラック企業ですよ。ブラックを超えているんじゃないかなあ(笑)。
ある程度、徒弟的な会社って、みんなそうですよね。でも、ぼくは会社を始めるときに、それをやりたくなかったから、そうじゃないようにしたんです。
たぶんなんですけど、ブラックになるのは、やっぱり稼ぎ方がまだ見えてないからですね。デザイン事務所がちゃんとどうやって稼ぐかをわかって、仕事の配分を上手にしていけば、あんなにブラックにする必要はないのかもしれない。
ブラック企業って、実際になかを見てみないとわからないですけど、大変だろうなあって思いますね。社長もそこで働く人も、両方が気の毒。