糸井重里「ブラック企業が生まれる理由」 糸井さんと、これからの働き方を考えてみた(下)

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――「ほぼ日」の商品は、価格設定も世間の相場より高めな印象があります。それはつくっている人に対して、報いたいといった思いがあるのでしょうか。

ぼくらはつくっている人に、「もっといっぱい注文するから、安くしろ」みたいなことをあんまり言わないんです。だから、たくさん売れたら、工場の人も儲かります。

本当はそういうビジネスをどんな企業もやりたかったはずなんですよ。でも、ちょっと油断すると、「もっとまけろ」みたいなやり方に走りますよね。そうなると、たとえば下請けをしている人たちを仲間だと思えなくなっちゃうんです。だんだん敵に見えてくる。

ものを買う人が、「もっと安ければ買うのに」っていうときって、たとえ安くても買わないですよ。それは自分のことを考えてみれば、よくわかるけれども。

「こっちのほうが5円、安いから買う」という場合、それは単なるゲーム感覚ですよね。その5円って、もし道に落ちてても、拾わないかもしれない5円でしょう。

ぼくらは、本当にほしいものを、人を困らせるんじゃない値段で買いたいという人と付き合いたいんです。「ほしくない」って思われたら、「そっかあ、ほしくないのかあ。ザンネン!」ってあきらめる(笑)。

――大企業ばっかりよりも、「ほぼ日」みたいな会社がいっぱいあるほうが、社会は幸せそうな感じがしますね。

どうですかね。これも一つの形です。

――楽しそうな働き方が、これから大企業ではあんまりできなさそうな気がするんです。

小さい場所は楽しいんです。名前を呼び合う関係じゃなくなったら、大変になるんです。

――糸井さんは社長として、「ほぼ日」の方々が楽しく働けるように、なにか工夫されていますか。

飽きないように考えてますね、いつも。飽きるのが一番つまんないんです。一緒に何か食べに行くのでもいいし、席替えみたいなこともします。イベント的なこともしょっちゅうやってます。そういうのは、ぼくが企画したほうがいいですから。

――日常とは違うお祭りのような体験をどんどんしかけていくんですね。

今回のような展覧会も、気分転換にもなるし、自分たちの思ってもみない才能が見つかったりすることも、よくありますから。

――楽しく働くことが、いい方向につながっていくんですね。

いろいろ大変なことも多いですけど。

――つらい時は「楽しめ」と言い聞かせて。

そう。永吉じゃなくても(笑)。

――ハードルは低めに設定して。

力がたまってきて高く飛べたら、「思い出しました!!」となる(笑)。

――ありがとうございました。

(構成:上田真緒、撮影:今井康一)

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