西武TOB空振りでサーベラス手詰まり 互いのメンツを守り、落としどころを探れるか

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6月25日に開かれる株主総会でも、サーベラスの株主提案へ反対姿勢を貫いている西武の優位は変わらない。

創業家一族で、西武株の14.95%を保有するNWコーポレーションの大株主でもある堤義明氏が会社支持を表明。「既定路線とはいえ、社内に安堵感が広がった」(西武関係者)。

サーベラスは業績予想が乱高下した経緯や情報開示姿勢などについて質問状の送付を検討している。ただ、抵抗はそこまでで、プロクシーファイト(委任状争奪戦)にまで出る動きは見られない。サーベラス側の取締役提案は否決される見通しだ。

みずほの仲介に期待

とはいえ、いつまでも対立関係を続けるわけにはいかない。

西武はすでに東証への上場申請を済ませているが、東証1部上場には流通株式比率35%が必要。サーベラス抜きで株式公開時にこの比率を確保することは容易でなく、筆頭株主との協議は不可欠だ。

サーベラスとしても、約1200億円の投資のイグジット(出口戦略)を考える必要がある。非上場のままでは、売却先など選択肢が減る。上場によって自由度を確保するのが望ましい。

上場という思惑は一致しており、すでに弁護士同士による交渉が行われるなど落としどころを探る動きが出ている。しかし、水面下の攻防も含めて、1年にわたるしこりを当事者だけでなくすことは難しい。

そこで双方の関係者から待望論が起きているのが、仲介者の登場だ。今のところ、西武のメインバンクであるみずほフィナンシャルグループに期待が集まっているが、みずほサイドから解決に乗り出す動きはまだない。互いのメンツを守りつつ、振り上げた拳をどう下ろすのか、両社の腹の探り合いは今後も続く。

(撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2013年6月15日

宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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