西武TOB空振りでサーベラス手詰まり 互いのメンツを守り、落としどころを探れるか

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TOB(株式公開買い付け)をめぐる攻防は、ひとまず西武の勝利で終わった。

米投資ファンドのサーベラス・グループが実施した、西武ホールディングス株のTOB。2度にわたり買い付け期間を延長し、多くの株主から応募を期待したが、集まった株式数の比率は3.04%。上限として設定した12%に遠く及ばないどころか、当初設定していた上限4%にも届かなかった。

結果的に、サーベラスは35.48%の保有にとどまった。せめて40%を超えれば、西武の経営陣に対して一定のプレッシャーを与えることができた。しかし、この数字では発言力の向上は限られてしまう。

確かに、3分の1以上の株式を確保し、サーベラスは特別決議に対する拒否権は得た。だが、西武は上場準備に入っており、特別決議を要する定款の変更や解散、合併などを行う予定は当面ない。そもそも、TOB前の32.42%でも議決権行使割合を考えれば、現実的には特別決議を拒否できる水準だった。西武の後藤高志社長は、「目標としては未達ということだと思う」と、勝利宣言ともいえるコメントを出した。

TOBをめぐっては、サーベラス側の拙攻が目立った。ガバナンス(内部統制)の強化を求め、元米副大統領でサーベラス会長でもあるダン・クエール氏や元金融庁長官・五味廣文氏ら8名の取締役就任を提案。その一方で経営権を取得するつもりはなく、あくまで友好姿勢を強調するという、ちぐはぐな行動が裏目に出た。

1400円という買い付け価格も魅力に乏しかった。国内の株式市場が上昇基調にある中で、再上場した場合の株価への期待は高まった。2013年3月期が経常最高益となり、西武が従来の年5円配当から、記念配を含めた年7円に増配したことも影響を与えた。「プロ野球・西武ライオンズの売却や西武秩父線の廃線」をサーベラスが提案していたことも暴露され、逆風が強まった。

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