「親友が1人もいない」悩みの適切な解消法 友人関係で一番大切な事は何なのか

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そして、4~5人のグループで会っていても、どこか気疲れするとか「2時間ぐらいだったら大丈夫だけど、半日も一緒にいると何かと気を遣って億劫だ」というぐらいの相手は「知人」と呼べばいい。

身近な人間関係を「自分が気疲れするかどうか」で、親友、友人、知人に区分してみる。そうすると、親友にしても友人にしても、そうたくさん数え上げられる人というのは少ないはずです。そして、それはごく自然なことなんです。だって人間というのは一人ひとり違うし、「ともに居合わせる」ということは、それだけでも大変な心理学的テーマなわけですから。

「気疲れしない」というのは、一緒にいても自己イメージを壊されない、ということです。そんな相手はどんな人にとってもそれほど多くはないはずなんです。

自分がその人に何を期待しているか

もしあなたが「友達がたくさんいるか」「親友がいるかいないか」ということが気になって仕方がないなら、自分のなかにどんな「期待」があるか、ということに目を向けてみると良いでしょう。そうすると、「友達」や「親友」がもたらしてくれる「見返り」を期待している自分に気づくことになります。「期待」があるからこそ、友達や親友がいないことに、不安を覚える。

でも、人間関係への過剰な期待は不幸の始まりです。これは恋人や夫婦、親子関係にも言えることですが、幸せな関係性というのは、ことさらに期待をかけないところから生まれるものです。

「期待するな」というとペシミスティックなように聞こえるかもしれませんが、僕は友人関係が幸せをもたらしてくれること自体を否定しているわけではありません。問題は、関係性そのものではなく、あなたの心の中にある「期待」なんです。

例えば映画を観に行くときを考えてみてください。宣伝や前評判で期待度が上がりすぎたために、実際に映画館に行った時につまらない思いをしてしまったことはありませんか。映画というのは、さほど期待せずに観に行った時ほど、楽しめるものなんです。

友人関係も同じです。別にネガティブな予測をする必要はありません。フラットに、日常の延長線上の中で友人や、親友とお付き合いする。そうすると、ちょっと仕草や言動によって、癒されたり、勇気付けられたりする。これが、友人や親友がもたらしてくれる幸せではないかと僕は思います。

親友や友人がいないと悩んでいる人ほど、「互いのすべてを分かち合える」「いつでも自分を頼ってくれる」といった妙な期待を相手に重ねています。でも、そういう期待は、あまり幸せをもたらさないんですよね。

そういう関係を築いていたら、長い人生の中では2時間、3時間と悩み相談をしてくれたり、本当に苦しい場面で助け舟を出してくれるということもあるでしょう。でもそれは、友人や親友であることの「必須条件」ではないのです。

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名越 康文 精神科医

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なこし やすふみ / Yasufumi Nakoshi

1960年、奈良県生まれ。精神科医。専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、99年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。
著書に『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』(角川SSコミュニケーションズ、2010)、『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。
夜間飛行よりメールマガジン「生きるための対話」刊行中。オフィシャルウェブサイトはこちら。twitterはこちら

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