「パクチー」の魅力をどこまで知っていますか 女性を惹きつける豊富な栄養とデトックス

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スパイスやハーブを多く扱うエスビー食品でも、この5年間でパクチーの出荷実績が3倍増になったという。実際、街のスーパーでもフレッシュのパクチーを当たり前に見かけるようになったばかりか、行く時間が遅いと、売り切れていることもしばしば。

現在のパクチーブームを予見・牽引した一品

思い起こせば、筆者がパクチーを強く意識した最初の料理は、かつて銀座・三原小路にあったワインビストロ『グレープガンボ』で食した「香菜の爆弾」だ。香菜の葉のみを、皿に山盛りにし、ナンプラーやガーリックを効かせたサラダは、それまでにエスニック料理店で口にしたパクチーとは趣が異なり、新しい味覚の扉を開くような存在感があった(現在は、『グレープガンボ』でシェフを務めた和知徹氏の店『マルディグラ』で、このメニューは引き継がれている)。現在のパクチーブームを、予見・牽引した一品ではなかったか。

もう一軒、忘れてはならないのが、2007年にオープンした『パクチーハウス東京』。実はここ、“世界初のパクチー料理専門店”だ。開店当時はおそらく抵抗感を示す人も多かったはずと推察するが、すべての料理のみならず、デザートやオリジナルカクテルにももれなくパクチーを使用。「苦手な人を克服させる」という気概に満ちた姿勢を貫いている。ここ2、3年でぞくぞくオープンしたパクチー料理専門店の、礎になっていることは間違いない。

とかく匂いに注目が集まりがちなパクチーだが、人気の背景にはその栄養面の優秀さもある。抗酸化(アンチエイジング!)作用の高いベータカロテンやビタミンEが非常に豊富な上、疲労回復に有効なビタミンB、コラーゲンの生成を助けるビタミンCも含有。その上、リナロールやゲラニオールといった、あの独特の匂いのもととなる香気成分にもまた、消化促進などの多様な働きがある。古代ギリシャやローマでも、薬草として重用されていたと聞けば、信頼度も増す。

さらにトドメは、体内に残留した有害毒素、ことに水銀、ヒ素、鉛、カドニウムなどの重金属の排出が得意で「デトックスハーブ」の異名を持つという点。なるほど、特に女性の間で“パクチニスト(パクチー愛好家を指す造語)”が増えたのにも合点がいく。かく言う筆者も、今では、飲食店のメニューに“パクチー”の文字を見つければ積極的にオーダーするし、いつしか冷蔵庫にも常備するように。知らず知らず心身に毒素が蓄積しているがゆえに、ついパクチーに手が伸びるのか。日々是デトックス。

ちなみに、筆者が今年最も度肝を抜かれたパクチー料理は、谷中銀座のそばにある中華『深圳』の一品だ。皿の上に見えるのはパクチーの小山のみ。どの角度から見ても、緑色。が、その森へスプーンで分け入れば、中にはスパイス醤油味のラム肉と玉ねぎがどっさり、そしてその下にごはんという「ラム肉とパクチーの炒め飯」1000円也。これが相当のボリュームで、食べ切るまでの一部始終を振り返ると、さながら“ゲドク戦記”であったことも、蛇足ながら付け加えておく。

(写真:Yu Nakaniwa)

小石原 はるか フードライター
こいしはら はるか / Haruka Koishihara

東京都生まれ。フードライター。一度ハマると歯止めの利かないマニアックな気質と比較的丈夫な胃袋をもつ。著書に『スターバックスマニアックス』『さぬきうどん偏愛(マニアックス)』(ともに小学館文庫)、『レストランをめぐる冒険』(小学館)、『東京最高のレストラン』(共著・ぴあ)などがある。近著に、 雑誌『BRUTUS』の連載をまとめた『自分史上最多ごはん』(マガジンハウス)。

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