さて、そんなクレッグズ・リストに告知を出すのは、ほとんどの場合が無料である。有料になるのは、企業が人材募集をする場合だけ。その場合でも1件当たり75ドル程度と安い。そしてこれが、まさしくアメリカの新聞ビジネスを苦悩させている理由だ。
というのは、アメリカの新聞ビジネスは従来、読者の購読料と共に広告料が大きな収入を占めてきた。しかも、その広告料の大部分は三行広告と呼ばれるタイプのもの。つまり、「人求む」「貸家あり」といった情報である。
かつてなら、その3行広告を見て、関心があれば電話をし、相手から詳細を聞くという風にしてやり取りが成り立っていたのだが、クレッグズ・リストがインターネットで同じことをやり始めてからは、三行以上の内容をその告知に盛り込むことができるようになった。ただでさえ、無数の人々がクレッグズ・リストのサイトで集っているから、そこに告知を出すほうがずっと効率がいいのだ。
そうして、広告主がごっそりとクレッグズ・リストへ移った。その結果、新聞社はどこも広告収入を失ってしまったのである。アメリカの新聞は全国紙よりもローカル新聞が主流だったのだが、クレッグズ・リストがアメリカの津々浦々まで浸透するようになって、無数のローカル新聞が苦悩するようになった。そうして、クレッグズ・リストは新聞メディアの敵とも見なされるようになったのだ。
始まりは、インターネットの理想
しかし、クレッグズ・リストが面白いのは、何もあこぎな商売をして人々の人気を得たのではないということである。
クレッグズ・リストがスタートしたのは1995年と、アメリカでヤフーが創設された年と同じだが、そのスピリットが生まれたのはヤフーよりもさらにさかのぼる頃だ。それは、インターネットとは儲けのためではなくて、人々を自由に解放し、人々がつながるために存在するという信念に支えられていた時代である。
クレッグ・ニューマークは1952年生まれで、若くして父を亡くしてからは、家族と共に貧しい生活を生き延びた。奨学金を得て高校、大学を卒業した後、IBMなどで十数年間プログラマーとして働いた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら