ファンドも食指!音声認識ベンチャーの実力 アドバンスト・メディアの鈴木清幸社長に聞く

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50億円は1社に投入するわけではなく、複数の会社にM&Aや資本参加を含め投資していくという。

「50億円を全部使うつもりはない。これはとりあえず社債として借りたもの。最悪の場合、返さなければならず、返すおカネも持っていないといけない。それを持っておいて、調達したおカネでトライし、うまくいけば2倍のおカネが貯まるのが望ましい」

2年後、3年後にこれをもっと増やして、さらに大きな挑戦をしたいというのが、鈴木社長の意図のようだ。

営業黒字化より成長を優先

主力製品の「Ami Voice」。音声認識精度の向上を図っている

今2014年3月期の業績計画では、上期に5.1億円という大きな営業赤字が見込まれている。ただ、今期は上場以来初となる営業黒字も見えていた。

「(上期の赤字は)音声認識の精度向上のところに人を投下することが大きい。M&Aの部分は、そんなに出てこないはず。今年度は普通にやっていけば営業黒字にはなる。ただ、それでは普通のビジネスにしかならない。もっと大きな成長を遂げるのが目的」

強い競合があるためというわけではないが、早く先に進みたいという思いは強い。特にアジア市場の開拓には強い意欲をみせる。そのカギとなる多言語化にも注力する。投資額は60億円という全体から見れば、5%の3億円。これで中国語も韓国語も対応する。

「日本語版はホリゾンタル(水平的)に、いろんな分野のアプリに対応できるくらい汎用的に作った。そのために時間もかかったし、おカネもかかった。すでに土台はできている。だから、たとえばベトナム語版をつくる場合は、日本で行っているもののうちでベトナムで必要なものを決め、それを作るので早い。だいたい3カ月から6カ月で出せるという感覚でやっている」

多言語化に対する自信は高い。そして、その体制作りも始まりつつある。

「今いるアドバンスト・メディアのメンバーで、そういうことのできそうなメンバー候補はいる。そこから選んでいる状態」

まずは、音声認識向上から始め、その後に、多言語化という順番になる。ただ、米国に強力なパートナーがあり、動き出せば早いようだ。

「米国でMモーダルというすごい会社と強固な関係を築いている。彼らは医療分野では米国で1位。彼らのやっているエンジンの土台であるエクスカリバエンジンは、われわれと同じエンジン。それをお互いに修正して使っている。音声認識の上位部分である自然言語処理、人工知能は彼らが得意とする部分。これでつくるサービスは日本とアメリカで姿が違うものになるが、上位の技術は共通で使える」

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