中国勢も驚く「中欧鉄道メーカー」の存在感 シュコダ・ペサが低価格を武器に西欧へ進出

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ペサDartの側面。窓周りなど、前時代的な造りとなっているが、外見とは裏腹に、車内の快適さは非常に高い

前述のペサが製造したインターシティ用電車Dartの側面を見れば、西欧系メーカーとの違いがはっきりわかる。

厚ぼったい抑え金で天地寸法の狭い窓を固定し、その周りを黒く塗装して目立たなくしている。しかし、パッと見た感じでも凹凸が分かるなど、どうも野暮ったさが拭い切れていない。西欧系のメーカーであれば、側面の凹凸を極力減らすような処理を行ない、窓も天地寸法を大きく取るなど、全体的にすっきりしたデザインとするだろう。

まるでイルカのような近未来的な前面デザインとは実に対照的な、古臭い側面デザインを併せ持つ、そんなアンバランスさが良くも悪くも中欧系メーカーの特徴なのだ。前述のシュコダが製造したドイツ鉄道向け102型電気機関車も、西欧系メーカーの機関車と比較すると、決して均整の取れたスタイルとは言えず、デザインの好みも分かれる。

コンサール社のクロアチア向け近郊列車。カメラが側面に大きく飛び出している

また本当に細かい部分だが、例えばバックミラーに代わって採用されつつある後方監視カメラも、中欧系のメーカーは特徴的だ。西欧系のメーカーならば出っ張りを極力抑えた目立たない形にするだろうが、中欧系は気にしない。例えば展示されていた車両のうち、クロアチアのコンサール(Končar)社の低床式近郊電車は、カメラが側面に飛び出た格好となっており、見た目もあまり良くない。

もっとも、これは必ずしも欠点ではない。高速列車などの優等列車はブランドイメージもあるので、ある程度のこだわりを持ったデザインが必要だが、通勤車両や近郊車両の場合、十分な性能と信頼性が備わっていれば、デザインは機能重視でも問題ないだろう。デザインにこだわりがありそうなイタリアですら、最近はペサの近郊ディーゼルカーを積極的に輸入している。コストを考えれば、普段の足にピニンファリーナなど、高級ブランドのデザインを使わなくても良いのだ。

発展途上だが高い将来性

ただこうした特徴も、いずれ薄れていくことが予想される。中欧系メーカーのデザインは過渡期にあり、この数年で飛躍的に進化を遂げている。また、中国メーカーに見られるような、「どこかで見たことがある」デザインではなく、いずれも独創的で、(その賛否はさておき)概ね独自のデザインを貫いている点は感心する。

まだまだ「発展途上」の段階にあると言えるが、細かい性能やデザインは、いずれ西欧系メーカーと遜色のないレベルまで高まることは間違いない。ただし、経済発展により人件費などが上昇し、車両価格が今よりも割高になることも考えられる。

2年後のイノトランスで、日立製作所などの日本勢を含む各メーカーの勢力図はどのように変化しているのか、その時に中欧メーカーはどのような製品を世に送り出し、どのような立ち位置にあるのか、今から興味が尽きない。

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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