――原監督がお薦めの木下作品を3本挙げるとしたら、どの作品になりますか?
『永遠の人』『笛吹川』、それから意外なところで『今年の恋』。これは『二十四の瞳』の監督というイメージを覆してくれる3本だと思います。
『今年の恋』は正月映画の1本として公開された作品です。『男はつらいよ』などもそうですが、正月映画というのは、みんなを楽しませることを目的として作られている。『今年の恋』もとにかく映画としてものすごくよくできている。技巧派としてのテクニックのすばらしさを実感できると思います。それから『永遠の人』『笛吹川』は、見た人をぶん殴るような過激な映画。まずはそこから体験してほしい。
昔の映画のよさとは?
――昔の映画を見ることのよさとはどんなところにあるんでしょうか?
主に1950年代、60年代ぐらいの日本映画には、本当に驚かされるくらいよくできた作品が多い。映画産業にまだ力があり、娯楽の王道だったという華やかな時代性もあるとは思いますが、演出レベルにしても、役者のレベルにしても、画作りにしても、圧倒的です。僕は木下作品が自分の仕事のお手本になっています。
今のようにみんなで知恵を寄せ合って、無難な作品にするのではなく、木下監督なら木下監督、黒澤監督なら黒澤監督といった人たちが自分の色をガーンと出して、すごい作品を作っていた時代だと思うのです。その個人の作家の強さみたいなものが画面にも出ているので、力強さもハンパじゃない。少しでもそういう時代の作品を見習えたらと思っています。
『はじまりのみち』も木下監督を描いた作品なので、僕なりに感じた木下監督の過激なところ、冒険心に富んだところなどを、なるべく意識して作ったつもりです。それを見る人にもぜひ感じてほしい。ただの親孝行の息子と病気のお母さんの話だけではない、ということは、本当に誤解のないように伝えられたらと思います。
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