ミクシィ新社長、挽回のシナリオ 異色の経歴を持つ30歳新社長の手綱さばき

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アグレッシブに変身

こうした状況で朝倉氏が描くミクシィの挽回策は「SNSのミクシィだけではない、それ以外のサービスを作ること」。

具体的には、前年度末2本だったスマホアプリを1年間で50本に引き上げる。SNSだけにこだわっていないため、「ライバルはフェイスブック、LINEだけではないし、ミクシィのブランドを冠さないものもある」という。

一方で、SNSのミクシィで培った資産も最大限に利用する。7月にはネット広告子会社を設立。単にミクシィ向け広告の獲得を強化するだけでなく、ユーザー属性や趣味嗜好のデータなどを広告主が活用できる支援ツールなども提供する。

また、積極的には行ってこなかった投資事業も本格的に開始した。上場時に調達した70億円に加え、年々積み上げた現預金130億円から50億円規模の投資枠を設定。新体制発表から1週間後には早くもスマホアプリ会社2社に出資した。

つまり、どちらかというとコンサバティブな従来路線を否定し、アグレッシブな新生ミクシィとして生まれ変わることになる。その役目を担うのは朝倉氏一人ではない。6月の総会では川崎裕一氏(36)と松岡剛志氏(35)という二人の執行役員も取締役に就任する。特にネットベンチャー、はてなの副社長も務めた川崎氏は最高事業責任者として朝倉氏をサポートする役目だ。

創業者の笠原氏は経営には直接タッチせず、新規事業の創出に専念する。ただ、「保有株数を減らすつもりはない」ため、大株主としての絶大な影響力は残る。朝倉氏は「万が一意見が対立した場合は筆頭株主として社長を解任してもらっても構わない。それぐらいの覚悟で改革を進めていく」と言い切る。

ミクシィは輝きを取り戻すことができるのか。騎手を夢見た男は新しいレースに挑む。

(撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済2013年6月1日

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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