個人向け国債は、銀行、ゆうちょ銀行、証券会社などで買えるが、一つ注意が必要なのは、これを買いに行くと別の商品(投資信託や外貨建ての生命保険)を勧められる可能性が大きいことだ。
金融機関から見ると、代金の0.5%手数料が国から入って、後は資金が10年間寝る公算が大きな個人向け国債は、せっかくのカモ(お金を持ってきた顧客)の料理法としては、淡泊過ぎる味付けだ。
毎月分配型投資信託、個人年金保険(外貨建)、ラップ口座など、何れも金融庁が「金融レポート」(平成27事務年度版、平成28年9月刊)で問題視している高手数料商品の何れかに誘導したいところだろう。この種の誘導には絶対に乗らずに、決然と個人向け国債を買い切って欲しい。
例えば銀行員に、「利回りが低いけどいいのですか?」と言われたら、「はい。安全ですし、定期預金よりも高利回りなので結構ですよ」と答えよう。「国債ですか。日本の財政赤字が大変大きいことはご存知ですよね。大丈夫でしょうか?」と言われたら、「はい。知っています。しかし、国債が暴落すると、政府よりも銀行の方が先に潰れますよ。あなたの生活の方がずっと心配です」と切り返そう。加えて、前記のような商品をセールスするような金融機関とは縁を切ることが出来たら、資産の防衛法として満点だ。
「最大の資産」を使う安倍政権、日経平均も上昇しやすい
さて、マーケット的にはプラスだといったが、今後の株式市場はどうなるだろうか。
相場は、政治論としての善し悪しや、好き嫌いを離れて、考えねばならない。基本的には、現在の政策が継続するという安心感はプラス材料だ。
また、安倍政権としては、民進党の「顔」が、二重国籍問題の弱点を抱えている蓮舫代表と消費税率引き上げの張本人で不人気な野田幹事長であるうちに、解散総選挙を仕掛けたいだろう。
筆者が、野田氏の「揺るがぬ不人気」を実感したのは、先般の参院選の開票速報番組に出るために、北海道を訪ねた時だった。北海道は、3人の当選枠を巡って自民党と民進党が2人の当選を目指した激戦区だったが、この選挙の終盤で民進党の北海道本部は野田氏の応援演説を断って、2人当選の成果を得た。身内さえもが「野田氏が来ると票が減る」と判断していたわけだ。
安倍政権にとって、現在も最大の資産は、「有権者の記憶に残る民主党政権時代の経済政策の失敗」だ。来年前半までの間に解散を仕掛けるとすると、その際の総選挙は、この資産が使える最後の機会となるだろう。安倍政権としては、民進党が蓮舫・野田体制のうちにこれを使わぬ手はない。
政権は解散に向けた環境作りを求めるはずなので、政策としてポジティブなサプライズが出やすい状況となる。また、年内に実行されると見られる米国の利上げも、まだ今の段階では世界の暴落の引き金を引くよりも、ドル高・円安を通じて日本株を支援する効果を持つのではないだろうか。
年末にかけて、日経平均株価で1000円から2000円程度の上昇を予想する。競馬の予想よりは当たるような気がするが、もちろん、外れる可能性も大いにあることを強調しておく。
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