円安・株高・債券高は基調転換を迎えたのか 市場動向を読む(債券・金利)
前回(5月3日)の本欄では、4月の波乱の債券相場を受けて、2通りの長期金利シナリオを提示した。
一つは、今年度の債券運用計画が連休明け後から実践され、日本銀行と民間投資家のいわば国債争奪戦による『超・需給相場』が現実化し、長期金利は例えば0.40%台へと再低下し、低位安定するというストーリー。もう一つは、民間投資家が国債争奪戦の不戦敗を決め込み、外国債や株式をはじめとするリスク性資産に運用対象をシフトさせる『ポートフォリオ・リバランス』を活発化させるため、長期金利はさほど下がらないというストーリー。
筆者は前者の可能性の方が高いと予想した。ところが、実際は一段の金利急上昇が債券市場を襲った。具体的には次のような経緯だ。
米国の長期金利に連動して日本も長期金利上昇
長期金利は4月後半からの3週間、0.60%前後で保合っていたが、5月10日から忽然と上がり始め、15日には昨年4月26日以来の高水準となる0.920%に達した。引き金は米債安と円安・株高を材料にした売り仕掛け。これによって、メガバンクのリスク量を圧縮する目的の債券売りが誘い出され、金利上昇を必要以上に加速させたようだ。
9日に発表された米失業保険申請件数が市場予想よりも下振れしたことから、FRB(米国連邦準備制度理事会)による金融緩和政策の『出口戦略』が早まるとの思惑が強まった。米長期金利が1.90%台に上振れすると、足踏み状態だったドル円相場は円安が再加速、心理的な抵抗線だった1ドル=100円をついに突破した。
日経平均株価は13日、そのような円安進行を好感して416円高と急反発。逆に債券は売り込まれ、先物取引では同日午後、量的・質的金融緩和(4月4日)後で6度目となる売買一時停止措置(サーキット・ブレーカー)が発動された。翌14日にはメガバンクによる中期債の大口売りが噂され、債券先物取引では連日のサーキット・ブレーカーが発動されるなど動揺が深まった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら