円安・株高・債券高は基調転換を迎えたのか 市場動向を読む(債券・金利)

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そうしたなか、日銀は15日、1年物の固定金利オペ2兆円を実施。「やや長めの金利の急激な上昇に対応するため」(金融市場局)とのコメントも付し、金利上昇を抑制しようという姿勢を明確にした。債券市場はこの『シグナル・オペ』を受けてようやく小康を取り戻し、長期金利は週末17日に0.795%まで低下した。

長期金利急騰、株暴落、円急反発

ところが、嵐はこれで終わらなかった。長期金利は翌週に反発に転じると、23日に一時1.000%と1年2カ月ぶりの高水準まで上振れした。

きっかけは再び前週末の米債安。米景気の楽観的な見通しが広がったことによる。そして、週の初め、20日の黒田発言が火に油を注いでしまった。黒田東彦日銀総裁が月例経済報告で「経済物価の先行き見通しの改善で金利が徐々に上昇していくのは当然」と一般論を展開。債券市場参加者はこれを、金利上昇を事実上容認した発言と自虐的にも受け止めた。21日の40年利付国債入札は慎重ムードのなか、当然、低調な落札結果に。

22日には、日銀が政策委員会・金融政策決定会合で金利上昇の抑制策を打ち出さなかったため、それを期待していた向きからいわゆる失望売りが出た。黒田日銀総裁が会合後の記者会見で「(大規模な国債買い入れの弾力運用で)引き続き金利に下押し圧力」「(長期金利の抑制に)引き続き尽力していく」などと述べ、市場の日銀不信を払拭しようとしたが、地合いは好転しなかった。

そのため翌23日、長期金利は大荒れの展開を強いられた。前日の米長期金利の2.0%台乗せ(FRBによる金融緩和の早期解除に対する警戒感が高まったことによる)などを手掛かりに、朝方から債券先物に売りが集中。9時前に前日比1円安に張り付き、異次元緩和の決定後8度目となるサーキット・ブレーカーが発動された。

9時過ぎに売買が再開された後も大幅に続落。日中取引の値幅は2円4銭と、4月5日(異次元緩和の決定翌日、3円34銭)以来の大きさに。現物市場では狼狽売りが誘い出され、長期金利が1.000%を付けた。日銀は10時過ぎに長期国債買い入れオペの8100億円、1年物の固定金利オペの2兆円をオファーし、後者について「長期金利の過度なボラティリティ拡大に対応するため」とコメントした。

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