日本銀行の黒田東彦総裁は、「今後2年間で消費者物価上昇率を2%に引き上げる」と述べている。4月26日に発表された日銀の「物価展望レポート」は、そこに至る道筋を示した。
これは、実現できるだろうか? 消費者物価に対する金融緩和策の波及メカニズムが説明されていないため、その判断は難しい。ここでは、2%目標を市場がどのように評価しているかを見ることとしよう。
名目金利=実質金利+期待インフレ率 の関係(フィッシャー方程式)があるので、実質金利が変わらないときに期待インフレ率が高まれば、名目金利はその分だけ上昇する。金融緩和によって実質金利が低下すれば、名目金利の上昇幅はインフレ期待の上昇幅よりは小さくなる。これまでのデータを見ると、長期金利と物価上昇率の間には正の相関が見られるが、長期金利の変動は物価上昇率の変動より小さい(白塚重典「金利の期間構造と金融政策」、『日銀レビュー』2006年4月)。
長期金利の最近の動向を見ると、新金融政策発表前に比べて、長期金利は上昇した。これを反映して、住宅ローン金利も上昇した。これを見ると、人々のインフレ期待は高まったように見える。ただし、上昇幅はごくわずかだ。
人々のインフレ期待に関する情報は、イールドカーブ(金利の期間構造を示す曲線)から計算することができる。以下では、これについて説明しよう(なお、ここで述べることの基礎的な説明は、拙著『金融危機の本質は何か』第10章、東洋経済新報社、09年、を参照されたい)。
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