32歳高年収女子が対峙した「非モテ男」の正体

東京カレンダー「崖っぷち結婚相談所」<12>

それとも、正木はやはり、自分のことなど忘れてしまったのだろうか?もう2週間近くも連絡がないのだ。そうだとしても、不思議はない。そんなことを考えると、杏子はつい目頭が熱くなってしまう。

「杏子さんも、やはり可哀想だと思いますか?嬉しいです、陸ガメに興味を持ってくれて……。もし良ければ、今度ゼウスを見に来ませんか?ゼウスは美人好きなんです。きっとすぐに杏子さんにも懐いてくれると思います!フフフフフフ!」

杏子は、甲高い桜田の笑い声で、ハッと我に返った。

男は相変わらず杏子の顔の少し下あたりを見つめながら、嬉しそうな笑顔を浮かべている。よく分からないが、桜田は上機嫌だった。

「そうですか、ふふふ……」。辛うじて、杏子は静かに微笑み返したが、限界だった。悪い男ではないだろうが、そろそろ切り上げたかった。

「杏子さん、もしお時間あれば、上の『恵比寿』で、鉄板焼きディナーでもいかがでしょうか?せっかく話が盛り上がって来たところですし……」

「あっ、ご、ごめんなさい。私、実は今日は会社で少し仕事をしなければならなくて。また是非、ご一緒させて下さい」

「そうですか……、お仕事なら、仕方ないですね。では、相談所の方にお願いしておきます。次はゆっくりディナーに行きましょう。フフフフフ!」

冷静に自身の婚活を振り返る杏子に、偶然の再会が…

――桜田さんは、悪い人ではありませんでしたが、私とはご縁がなかったと思います。

杏子は逃げるように『ザ・ラウンジ』を後にし、すぐさま直人にメールをした。メールを打ち終わり、杏子はふと気づく。デジャビュだった。そう、1回目のマッチング、飯島とのデートは、まさに今回の逆パターンだったのだ。

お門違いなファッションに、独りよがりの会話。きっと自分もあの桜田のように、当時は相手の意向を汲み取ることなく、空気の読めないコミュニケーションを進めていたのだろう。それに気づけただけでも、自分も少しは成長しているのだろうか。

秋らしい切ない気持ちを抱え、杏子はぼんやりと恵比寿ガーデンプレイスを歩いていた。最近『BRICK END(ブリックエンド)』という名のお洒落なスタンド横丁もオープンしたことから、夕暮れ時のガーデンプレイスは、いつもより賑わいを見せているようだ。

「杏子!」

『ジョエル・ロブション』の前の階段を降りたところで、突然名前を呼ばれ振り返ると、杏子の胸は大きく高鳴った。

そこには、元彼の知樹が立っていた。傷心の女心を誘惑する、元彼の存在。まさかの知樹との再会で、杏子は……?

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