32歳高年収女子が対峙した「非モテ男」の正体 東京カレンダー「崖っぷち結婚相談所」<12>
婚活とは、なんと酷な道なのだろう!
週末の夕方、杏子は恵比寿のウェスティンホテルに足を運んでいた。3人目のマッチング相手、桜田に会うためである。
杏子は秋らしく、ボルドー色のISSAのワンピースに身を包んでいた。キャサリン妃愛用で有名なこのブランドの服は、長身でスリムな杏子の身体を、さらに美しく上品に演出してくれる。ドアマンたちが杏子に送る視線は、一段と温かい。当然だ。自分ほどゴージャスに、このハイクラスなホテルのロビーを彩らせる女も、中々いないだろう。
しかし、お気に入りの服を着ても、ドアマンたちに賞賛の眼差しを向けられても、杏子の心はイマイチ後ろ向きであった。待てど暮らせど、正木からの連絡がなかったからだ。
――あの夜は、一体何だったの……。
正木の抱擁を思い出すたびに、杏子の胸の奥は、ズキンと痛む。しかしそんな状態でも、傷心に暮れている暇など一切ないと、直人は言った。他の男のことで胸を痛めながら、新規の男ともマッチングに挑まなければならぬとは、婚活とは、なんと酷な道なのだろう。






        
        
        
      
        
      
          
          
          
          
        
        
        
        
        











