32歳高年収女子が対峙した「非モテ男」の正体 東京カレンダー「崖っぷち結婚相談所」<12>
典型的な結婚できない女、杏子、32歳。
慶應大学卒業後、丸の内の某外資系金融でセールス職に就き、年収は2000万円を優に超える。
美人だがプライドが高くワガママな彼女は、男運が悪く全くモテない。さらにハイスペックゆえ、男が近寄りたくない女ナンバーワンとまで噂されている。
婚活に危機感を持ち始めた杏子は、結婚相談所に登録した。婚活アドバイザーの直人からアドバイスを受けつつ、2回目のマッチング相手・正木とは、イイ感じに。しかし、直人からは3回目のマッチングを勧められてしまった。
婚活とは、なんと酷な道なのだろう!
週末の夕方、杏子は恵比寿のウェスティンホテルに足を運んでいた。3人目のマッチング相手、桜田に会うためである。
杏子は秋らしく、ボルドー色のISSAのワンピースに身を包んでいた。キャサリン妃愛用で有名なこのブランドの服は、長身でスリムな杏子の身体を、さらに美しく上品に演出してくれる。ドアマンたちが杏子に送る視線は、一段と温かい。当然だ。自分ほどゴージャスに、このハイクラスなホテルのロビーを彩らせる女も、中々いないだろう。
しかし、お気に入りの服を着ても、ドアマンたちに賞賛の眼差しを向けられても、杏子の心はイマイチ後ろ向きであった。待てど暮らせど、正木からの連絡がなかったからだ。
――あの夜は、一体何だったの……。
正木の抱擁を思い出すたびに、杏子の胸の奥は、ズキンと痛む。しかしそんな状態でも、傷心に暮れている暇など一切ないと、直人は言った。他の男のことで胸を痛めながら、新規の男ともマッチングに挑まなければならぬとは、婚活とは、なんと酷な道なのだろう。
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