「パートタイム社会貢献」という働き方 新世代リーダー Living in Peace代表 慎泰俊
そうした経緯もあり、大学時代は人権を学び、人権運動にも参加したのですが、卒業後の就職先としては外資系の投資ファンドを選びました。なぜかというと、この先何をするにも、世界を動かしている経済を学んでおいたほうがいいと思ったからです。
そして人権運動に携わって痛感したのですが、まっとうな活動をしようとする人ほどスポンサーがつきにくく、スポンサーのついている人ほど活動が制約されるというジレンマがあったのです。ならば、できるだけ多くの人を貧困から救うためにも、金融のプロフェッショナルとして実力をつけておくことは、方向性としては間違っていないと考えました。
このように、私には世の中を良くしたいという目的が先にあり、就職先や仕事はそれを実現するための手段だと考えていました。でも、仕事をしているとそういう初心を忘れがちです。目の前の仕事に没頭し、身の回りのすべてが金額に置き換えられて見え始めた頃、偶然1冊の本と出合いました。ジェフリー・サックス教授の『貧困の終焉』です。
年間800万人が亡くなっているという貧困問題を終わらせる方法が書かれたその本に出合い、私は忘れかけていたことを思い出しました。よし、まずは勉強会だと思い立ち、ブログ経由で友人・知人に参加を呼びかけました。これが、LIPの活動が始まった経緯です。
自らの得意分野を社会貢献の武器にする
LIPの主な活動である発展途上国向けマイクロファイナンスファンドのプロジェクトと、国内の児童養護施設向け支援について簡単にご説明します。
マイクロファイナンスとは、発展途上国の貧困層向けに小口のお金の貸し付けなどを行う仕組みです。多くの発展途上国では、貧困層は通常の銀行からお金を借りることができません。そのため、彼らが新たにビジネスを始めて自立を試みようにも、非合法な高利貸しに頼るしかありませんでした。マイクロファイナンスは、そんな彼らにお金を貸すことで彼らの自立と、ひいては貧困からの脱却をサポートできるのです。
すでにマイクロファイナンスは世界中で実績をあげていますが、まだまだ資金が不足しています。そこでLIPは、マイクロファイナンスを提供する機関に投資をする、日本で初めてのファンドを企画しました。マイクロファイナンスの啓発活動を行う団体は日本にもありますが、ファンドの企画から現地調査、契約交渉まですべて自前でできるのはLIPだけです。現在までに合計5つのファンドを企画しています。