「パートタイム社会貢献」という働き方 新世代リーダー Living in Peace代表 慎泰俊
一方、国内の児童養護施設の支援では、主に資金調達支援と子どもたちのキャリア支援を行っています。児童養護施設は日本に約590あり、そこには虐待や貧困などさまざまな事情によって親から引き離された子どもが暮らしています。しかし、多くの施設が資金難のために、心に傷を負った子どもたちを十分にケアできる養育環境を整えることができていません。
そこでLIPは、「チャンスメーカー」という寄付プログラムを実施し、彼らの資金調達をサポートしています。クレジットカード払いによる月々継続型の寄付で、現在は約300人の寄付者から月間50万円強が集まります。今後どんどん増やしていきたいと思っています。
さて、これらの活動はいずれも、金融という私のバックグラウンドを生かしたものです。LIPの活動内容については、ほかにもアイディアがありましたが、最終的に自分の強みである金融の分野に絞ることにしました。たとえば、私が子どもたちの心のケアをしようと養護施設の手伝いに行ったところで、毎日子どもたちと接している施設の職員さんたちの代わりはとても務まりません。餅は餅屋であり、やはり自分たちの強みを生かしたもののほうが、世の中への貢献度は大きくなるのです。
パートタイムで社会貢献にかかわるということ
本気で社会貢献活動をしたいなら、パートタイムではなくフルタイムでやってはどうか。そういう意見もあるでしょう。しかしLIPの活動はすべて、パートタイムのスタッフによって行われています。なぜなら、パートタイムで社会貢献をすることに、大きなメリットと意味を見いだしているからです。
まずそもそも、本業がなければ、自分の生活に必要な安定収入を得られないという大前提があります。もちろん、やりたい社会貢献活動を通じて安定収入を得られたらよいのですが、そうなるまでには相応の時間がかかるでしょう。スポンサーの支援を得るという道もありますが、先ほども述べたとおり、スポンサーの顔色をうかがってやりたいことが思うようにできないのであれば、本末転倒になります。
また、後でも触れることですが、ビジネススキルを磨き続けるためにも本業を続けることに意味があります。社会貢献で成果をあげるためにも、ビジネススキルや専門知識は欠かせないのです。
メールや電話会議、クラウドコンピューティングなど技術の進歩に伴い、パートタイムでもできること、与えられるインパクトが大きくなってきました。これからはどんどん、自分も何かをやってみようと思う人が出てくるでしょう。そのモデルケースを、私たちが先んじて世の中に見せたいと思っています。