阿蘇山噴火、これから何に警戒するべきか 4度もあった「巨大カルデラ噴火」の恐怖

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ただ私は、熊本地震と今回の噴火には直接の因果関係はないと思っている。そう考える最大の理由は、ここ数年阿蘇山の地下では活発なマグマの活動が観測されていたことである。

つまり、日本列島でも名だたるバリバリの活火山である阿蘇山は、最近、活動的な状態にあると言える。そしてこれは決して「異常」なことではなく、活火山の「息づかい」と認識したほうがいいだろう。

巨大カルデラ噴火の危険性を認識せよ

10月8日の阿蘇山噴火による噴出物は約50万トンと推定されている。戦後最悪の火山災害となった2014年の御嶽山噴火とほぼ同量である。しかしこれらは日本列島でこれまで起きてきた数々の噴火と比べると決して大きいものではない。日本史上最大規模の噴火は富士山宝永噴火や桜島大正噴火などであり、今回の阿蘇山噴火の数千~1万倍もの規模だ。

そしてこのクラスの大噴火は日本列島ではおおよそ100年に1度起きてきた。言い換えれば、列島に110ある活火山は、いつこのような大噴火を起こしてもおかしくないのだ。たとえば富士山で宝永クラスの噴火が起きたとすると、首都圏でも数センチメートルの降灰が予想され、経済的被害は最悪2兆円を超えると言われている。

しかしここで私たちが忘れてはならない事実がある。それは、拙書『富士山大噴火と阿蘇山大爆発』でも強調したように、日本列島では富士山宝永噴火の100倍~数千倍の規模の噴火が幾度も起きてきたことである。地質学的なデータが比較的そろっている過去12万年間を見ると、北海道で4回、九州で6回、あわせて10回の「巨大カルデラ噴火」が起きている。最も直近のものは、7300年前、鹿児島県南方の「鬼界カルデラ」で起きた。そしてこの噴火のせいで南九州縄文人が絶滅したと言われている。そして阿蘇山も、過去30万年間に4度も巨大カルデラ噴火を起こしている札付きの火山である。もちろんその結果、あの雄大なカルデラ地形ができあがったのだ。

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九州中部で巨大カルデラ噴火が起こった場合の想定被害

巨大カルデラ噴火は確かにまれな現象ではある。しかし忘れてならないことは、それが一度起こった場合の想像を絶する被害である。最悪の事態を想定するために、人口分布や偏西風の影響を考えて、九州中部でこの噴火が起きたとしよう。地層の中に残された過去の巨大カルデラ噴火の記録に基づくと、数十キロメートルにまで達した噴煙柱が崩壊して発生した500度を超える高温の火砕流は2時間ほどで九州のほぼ全域を覆い尽くす。

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