これは投資銀行に限らず、事業会社などに経営上意思決定のためのアドバイザリー業務を行ういわゆるプロファーム全般、たとえば私がいたような戦略コンサル会社においても言えることで、戦略コンサルが戦略論や企業経営にかかわる知識だけで通用するということはなく、やはり総合力が求められるものです。
なぜならば、M&Aを含めこと経営に関する問題を解決するという視点で物事を考える際には、必ず複合的な視点が求められるからであり、そのような問題提起をしたり相手を説得しようとすると、どうしても単一の視点ではなく、ある程度の総合力が求められるシーンが多いからです。
たとえばM&Aアドバイザリー業務も、通常は投資銀行、経営コンサル、法律事務所、会計事務所など、多岐にわたる専門家が共同で作業をするわけですが、それらのとりまとめ業務を行うのは通常、投資銀行やコンサルであるという事実もあります。
法律や会計の知識は、あるに越したことはない
そういった複眼的視点を持ったチームをコントロールし取りまとめるという意味でも、投資銀行マンとしても、法律や会計、企業経営の知識があるに越したことはないわけですし、ある程度のランク以上では間違いなく必須となってきます。したがって、そのような会社において上を目指すのであれば、ファイナンスをベースとしつつも、プラスアルファが必然的に求められることになります。
投資銀行においてファイナンス知識だけではいつまでもエクセルマシーンのままですし、コンサル会社において戦略論の知識だけではいつまでもプロジェクト回転マシーンのままです。
アソシエイトやマネジャー未満のクラスではそれでよいのかもしれませんが、やはりそれ以上に行こうとするとそれでは全然物足りません。
そういった世界、つまり投資銀行のようにファイナンスの知識があることを前提としているような職場においては、ファイナンスの知識・経験という一本勝負では、どうしても勤務年数による経験値の差から年功序列的になる傾向がありますし、単一の土俵内における勝負だけでは、結局、周りの皆と均一化してどんぐりの背比べ状態になる、ということになりかねません。
ですから、プロファームにおいては、業務で必要とされる特定知識をマスターすることにとどまらず、プラスアルファの知識を持って、周りの他者から自分自身の差別化を図ることは当然するべきことなのです。
そのこと自体に迷うべきではありません。資格を取得するかどうかや、どの分野という議論は別としても、複合的な視点を身に付けるためのプラスアルファの勉強は、職業柄、もはや必須とお考えください。その意味で長谷川さんのお考えは正しいとは思います。
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