金利上昇の説明に”苦慮”する黒田総裁 円安・株高でも、国債市場は不安定なまま

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結局は金利の上昇を容認?

4日の金融緩和決定以降、銀行の市場運用担当者からは「仮に物価上昇が実現するという見方が強まれば、当然、金利は上昇していく。しかし、日銀は金融緩和で下げると言っている。金利はいったいどちらに動くのか」という声はあった。黒田総裁は会見で、「経済学の理論が教える通り」と断ったうえで、「短期金利のように中央銀行が完全に(長期金利を)コントロールできるものとは違う」とも述べているように、足元の金利上昇をいくらか許容しているとみられる。

従来、日銀は短期金利だけをコントロールし、長期金利の動向は市場機能に任せていた。一方、黒田日銀ではこれまでの緩和策が不十分だとして、短期から長期まで全体の金利低下を促すという未知の領域に踏み込んだ。それがうまくいかずとも、大胆な金融緩和を打ち出したことで人々の期待が変わり、円安・株高から企業業績の改善や個人消費の増加につながっていることに救われている面があるだろう。

そもそも、金利水準に影響する二つの要素を定量的に区別することは難しい。理屈としては、景気回復や物価上昇期待が大きく上昇すれば、日銀によるリスクプレミアム圧縮を相殺して金利が上昇する。黒田総裁は、「今の段階で直ちに金利が上がると見ていない」「大きく金利が跳ねると考えていない」と繰り返したものの、「さらなる金利低下を促す」と踏み込んだ発言はしなかった。

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