「バター不足」解消をめぐる不思議な規制改革 酪農家の意見は「今の制度で問題ない」

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ホクレン農業協同組合連合会(北海道)
東北生乳販売農業協同組合連合会(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
北陸酪農業協同組合連合会(新潟、富山、石川、福井)
関東生乳販売農業協同組合連合会(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、静岡)
東海酪農業協同組合連合会(岐阜、愛知、三重、長野)
近畿生乳販売農業協同組合連合会(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
中国生乳販売農業協同組合連合会(鳥取、島根、岡山、広島、山口)
四国生乳販売農業協同組合連合会(徳島、香川、愛媛、高知)
九州生乳販売農業協同組合連合会(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島)
沖縄県酪農農業協同組合(沖縄)

 

日本全国の酪農家は今1万7000戸あって、年間に740万トンもの生乳が生産されている。これを取りまとめる団体を細かく作っていけばいくほど事務コストは増加し、組織が中間で取る手数料なども増えていくようには思えないのだろうか。私からみれば「10農協が独占」ではなく、効率性を優先して10主体に落ち着いたという言い方のほうが正しいと思う。

「商社」と「役場」を足した機能を持っている

さて、酪農家は指定団体に販売を委託するわけだが、規制改革推進会議の答申を見ると、指定団体が酪農家の自由なビジネスを阻害しているというように読める。しかし、実際にはそんなことはない。酪農家が自分の搾った生乳を指定団体に販売委託をする場合でも、全量を委託するか、または一部を販売委託しつつ一部を自由にするということができるようになっている。

だから酪農家は特色のある生乳、たとえば牧草だけで育てたものだったり、乳脂肪の多いジャージー種の生乳であったりと、付加価値のついたものを通常より高い価格で販売委託をすることが可能だ。その際、もちろん乳業メーカーと直接の価格交渉をしてもかまわない。その代わりに、その生乳が売れないかもしれないというリスクを負うわけだ。

また、自分自身で牛乳や乳製品を製造・販売したいという場合は、指定団体から生乳を買い戻すという形にはなるが、可能である。すでにこの方式で自分のブランドでの牛乳製品を販売する酪農家もいるが、全体からすれば少数だ。

もちろん指定団体によっては一部、制約があって、誰もがその自由を享受できるわけではないようだ。たとえば筆者もかかわった事業だが、ある施設でジェラートを販売しようということになり、指定団体から酪農家を指定して生乳を購入したいという希望を出したが、その酪農家の生乳生産量が少ないため、タンクローリーで複数酪農家の生乳を混ぜてしまうので、実質的には無理ということになったことがある。

ただ、これは指定団体のせいというわけではなくて、単にコストとプロフィットのバランスの問題であり、仕方がないことである。どうしてもやりたいならば、自前でタンクローリーを購入し、リスクを取って実施すればよいのだ。誰もそれを止めないだろう。

実際には、酪農家が自由に出荷したいと思っていたとしても、複数の乳業メーカーに勝手に商談をして販売するということはほとんどない。というのは多くの場合、乳業メーカーは長期的で安定した取引をしたがるからだ。もちろん、夏場に牛が暑さにへばってしまい、計画していた数量の生乳を集められない場合などに、スポットで生乳を買いたいというようなことはある。

しかし牛乳製品はスーパー店頭や業務用など含め、年間計画に基づいて販売されている。だから生産者と乳業メーカーの間も長期安定取引が普通なのだ。この場合、農家が個人で取引交渉をするよりも、指定団体のように多くの酪農家の力を集合させた団体のほうが、交渉力が高まるのは当然のことである。

乳業会社の設備。生乳はここに集められる(著者撮影)

それすらイヤだという場合には、先に書いたようにすべて自ら加工・販売したってかまわない。ただし、この道を取る酪農家は少ない。それはそうだ、自由に販路が開拓できるとはいえ、牛乳が安価に販売されている現状の中で、自分の牛乳商品を開発し、営業で販路を開拓し、納品して代金決済をするという一連の業務をすべて負うことになるのだから、一酪農家の手に負えるものではない(私の友人の酪農家には、それを実行する強者もいるが、少数である)。

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