急成長「保険ショップ」は、いずれ淘汰の時代 アイリックコーポレーション社長に聞く

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特定の保険会社の商品に偏る売り方はしない

「保険クリニック」では多くの保険会社の商品が売られている。

――乗り合い代理店型の保険ショップについては、手数料率の高い保険会社の商品ばかり売る傾向があるのではないかといった批判もあります。乗り合い代理店に対する手数料開示の是非についても政府の審議会で議論されています。

投資信託との比較で手数料を開示していないのはおかしいと言われるが、手数料を開示している業界はほとんどない。ただし、特定の保険会社の商品に偏った売り方が業界の一部にあることからそうした批判がある。これ自体は問題だが、当社はそうした売り方はしていない。

――保険金の不払い問題が持ち上がった数年前から、保険会社は契約内容の周知や保険金の支払い漏れ防止に力を入れるようになりました。アイリックの取り組みは。

年に複数回の情報誌送付、新商品の案内などの際に、住所変更などの有無をチェックするためのアンケート用紙を同封している。お客様は当社を通じて複数の保険会社の商品を購入することが多い。給付金の支払い事由に該当するかどうかは当社ですべて把握しているので、複数社の保険に入っていても給付漏れが起こらない仕組みができている。

顧客満足度という面で、保険ショップは傑出している。保険契約の5年継続率は業界全体で97%前後に達している。1社専属の営業職員チャネルを含む業界全体では6割程度、訪問販売型の乗り合い代理店では3年で8割程度であることと比べても、数字の高さは歴然としている。

店舗数1位よりも、ソリューション力1位を目指す

――保険ショップの将来をどう見ていますか。

現在、さまざまなチャネルの中で伸び率がトップであることは確かだ。これまでは1社専属の営業職員チャネルのシェアを侵食して伸びてきた。

しかし、すでに店舗数は合計2000店前後に達し、町中でもかなりひしめくようになった。これからは競争原理が働き、淘汰が起きてくるだろう。訪問販売を中心とする大手企業系の保険代理店や、駅ナカの電鉄系の保険ショップとの競争も厳しくなっていく。電鉄会社が保険分野に本格参入した場合、駅ナカの保険ショップはコンビニエンスストアや自動販売機に近い業態として、今後、台風の目になる可能性が高い。

一方、同業他社では1000店舗計画を打ち出している企業もある。こうしたことから競争の激化は必至だが、当社はシステム開発に依拠することでソリューションナンバーワンの地位を保ち続けていきたい。

(撮影:梅谷秀司〈勝本社長の写真〉、大澤誠〈保険クリニック店頭の写真〉)


 

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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