"真のチーム”がないから、日本は勝てない 日本のチームは、単なるグループでしかない?

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鍵を握るのは、単体の技術でなくシステム

iPhoneが技術とデザインを融合させたヒット商品であるとしたら、iPhoneより前に発売されたiPodはハードウェアとソフトウェアとネットワークを融合させた、システムとしてのヒット商品だ。

日本では当時、「音声データ再生機」というハードウェアの部分が特に注目されたが、iPodの肝となるのはネット上のiTunes Storeとつないで、コンテンツをダウンロードしてiPodで聞くことができるという、その新しいシステムである。先ほどのデザインの話と同様に、このようなイノベーティブなシステムも、チームでないと生み出すことが難しいことはご理解いただけるだろう。

かつては単体のハードウェアやソフトウェア、あるいは特定の技術の優劣がビジネスの勝敗の大きな要因であった。しかし今は、それらを融合させたシステムの優劣で勝敗が決まる時代である。

たとえば私の専門領域でもあるセキュリティ・暗号技術でこのことを考えてみよう。あるスマートフォンに、第三者が破ろうとしても解読に1万年かかる暗号が実装されていたとする。この暗号技術を単体で考えると、「セキュリティレベルをもっと高めるために、解読に10万年かかる暗号を開発しよう」「いや、1億年かかる暗号を…」というベクトルで考えがちだ。

しかし、もしさらに高度な暗号技術を実装した影響で、スマートフォンのバッテリーの消費量が5倍になったとしたらどうだろうか。決済にかかる処理時間が10倍になったとしたらどうだろうか。おそらく消費者には受け入れられないものになるだろう。

なお、チームは必ずしもイノベーティブなシステムを生み出すときにだけ力を発揮するわけではない。従来からあるシステムの品質を向上させるといった課題でもチーム力が生かされる。

ボーイング社では「保守メンテナンスの時間を短縮できないか」という航空会社の要望を受け、ボーイング777の設計をする際に保守メンテナンスのスタッフをチームに加えた。

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