再編報道も飛び出す「造船不況」の深刻度 統合交渉が報じられた川重と三井造船。実現性は?

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もちろん、2社も状況は同じだ。造船事業を主力とする三井造船の13年3月期連結決算は、今後の操業度低下を見越した造船所の減損処理で236億円もの特別損失を出し、82億円の最終赤字に陥った。川重にしても、船舶海洋部門の前期営業益は41億円にすぎず、仕事が一段と減る今14年3月期は部門営業赤字に転落する可能性もある。

狙いは海洋資源分野か

両社が提携を模索する目的の一つは、造船技術を生かせる海洋資源分野の事業拡大にあるとみられる。

日本の造船業はバラ積み船などの一般商船を主としてきたが、造船バブル崩壊とアジア勢との競争で先行きは厳しい。そこで大手各社が狙っているのが、石油・天然ガスの開発・生産に絡む海洋構造物や特殊船舶の領域だ。生産井を掘る掘削船や浮体式の開発生産基地、洋上で原油から不純物を取り除いて一時貯蔵するFPSO、物資・燃料を洋上基地に運ぶ作業支援船など、その関連分野は多岐にわたる。

近年、石油・天然ガスの開発舞台が陸から海に移り、こうした海洋構造物や特殊船舶の需要は拡大。1案件当たりの金額も商船を造るよりケタ違いに大きく、年間の市場規模は20年までに10兆円を超すとの予測もある。現在、その建造工事は主に韓国や東南アジアなどの造船所で行われているが、日本勢としても「これだけ有望な市場を放っておく手はない」(大手幹部)。

そこで必要になるのが、設計・開発リソースだ。標準設計に近い一般商船とは違い、海洋資源分野は膨大な設計人員を必要とする。川重、三井造船が手を組んで造船部隊の技術者を動員すれば、最低限の人員は確保できる。三井造船はFPSOのエンジニアリングを専門とする三井海洋開発を子会社に持ち、川重にとっては、その存在も非常に魅力的だ。

とはいえ、事業統合や経営統合へと発展するには、大きな問題がある。商船建造の仕事自体が減っていく中での再編は、より大規模な過剰設備を背負うことになる。造船所の簿価が大きな三井造船はさらなる減損リスクを抱えており、こうした点も再編の大きなネックだ。はたして、両社による提携・再編は実現するか。日本の造船業の将来を占ううえでも、その行方が注目される。

(撮影:アフロ =週刊東洋経済2013年5月11日

渡辺 清治 東洋経済 記者
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