住友重機、構造改革で利益率5%を死守 住友重機械工業 別川俊介社長

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べつかわ・しゅんすけ●1954年生まれ、58歳。78年、京都大学法学部卒。2001年財務経理本部事業管理部長。07年常務執行役員財務経理本部長。12年副社長(CFO)。13年4月より現職。

重工4大メーカーの一角、住友重機械工業。売上高では三菱重工業などほかの3社に遠く及ばないものの、業界一の収益性を誇ってきた。が、2013年3月期は大幅減益に陥るなど、その収益力に陰りが見える。中でも一番の問題はタンカーを専門とする造船事業だ。00年代は年間10隻近い建造が続いたが、新規受注がこの2年間ほぼ途絶え、3月末の受注残はわずか2隻と事業存続の瀬戸際に立つ。財務経理に精通した別川俊介新社長は、この難局をどう乗り越えるのか。

──就任直後から構造改革の必要性を社内で唱えています。

質の経営を掲げて収益性を重視してきたが、足元の売上高営業利益率は5%台に落ちている。リーマンショック前の10%超は出来すぎとしても、各事業の利益率が一様に低下している点に危機感を持っている。社長就任が決まってすぐ、各事業部の執行役員たちに対策を考えるよう指示した。5%は死守すべき最低ライン。それ以上の数字を目標にして、収益・体質改善を進めていく。

──具体的には?

新興国を中心に成長が期待される事業として、この数年間、油圧ショベルや変減速機といった標準量産型の事業で海外工場や買収などに積極投資してきた。しかし、欧州債務問題や中国景気減速が重なり、想定したほど投資回収ができていない。工場の稼働率アップを急ぐほか、買収したベルギーの変減速機事業などはいったんスリム化が必要だ。

重厚長大型の事業は4月に組織改革をして、大型クレーンなどの搬送システムと物流システムを、鍛造プレスと大型医療装置を統合した。どれも国内での商売が大半なので、組織統合で規模を大きくして海外での本格展開を促す。あとはプラント、そして造船が大きな課題になる。

──住重の造船事業は、他社に比べても受注の不振が際立ちます。

リーマンショック以降は新規の建造需要が極端に細り、アジア勢との競合も激しい。おのずと価格条件は非常に厳しくなってしまう。経済合理性のない赤字受注はしない、というのが当社のポリシー。仕事欲しさに採算度外視で受注すれば、(後で多額の損失が出るので)将来に大きな禍根を残す。こうした当社の受注スタンスは今後も変わらない。

──その代償として、横須賀造船所の操業低下は深刻です。

今の受注環境ではやむをえない。操業低下に対応して人員も減らしており、社外工を含む現場の作業人員は2年前比で半分以下に減った。今上期中にさらに人数を絞り込む。当社社員に関していえば、他事業の製造現場への配置換えで対応している。ただ、受け入れ側の人数的な制約もあるので、今年から日野自動車さんの工場に出向も始めた。

──造船事業撤退の可能性は?

雇用の問題もある。責任ある立場として、可能性うんぬんを軽々しく申し上げるわけにはいかない。とにかく今は、将来に禍根を残すような大きな赤字案件は取らず、人員縮小で造船事業の赤字をミニマムに抑える。今後の受注環境を見たうえで、必要ならば追加的な策を講じる。

(撮影:今井康一 =週刊東洋経済2013年4月27日-5月4日合併号

渡辺 清治 東洋経済 記者
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