「若者離れ」する会社は、未来を軽視している 少数派ゆえに彼らの「交渉力」は強まっていく
それが、2015年の逆ピラミッド型の人口動態になった今、どのようにアンバランスなのかは見てのとおりです。労働人口における若者が減り、彼らの「量の影響力」が下がったせいで組織の多様性が低くなることは避けられません。前例や慣習にとらわれない、新しい意思決定を下すチャンスを失っている状態に、組織そのものが構造的に陥ってしまっているかもしれないのです。
言い換えると、もうひとつの若者の持つ影響力である、前例や慣習にとらわれず時代の“新しい前提”に基づいた「質の影響力」を、還元できない状態になっていると考えられるのではないでしょうか。もちろんその裏には、「顧客としての若者」の量の影響力の減少があります。
「若者向けにコンテンツ作っても、数字が取れないからやめとけ」「若者たちは取り込めても数が少ないから、ファミリー層向けの商品開発優先で」
こんな会話、皆さんの組織やチームで交わされたこと、ありませんか? まさに、顧客としての若者の持つ「量の影響力」が少なくなりつつあることで、組織や経営の判断が、若者を念頭に置いたそれではなくなっている状態です。
顧客としての若者の量の影響力と、労働力としての若者の量の影響力。相互に下がり続けるスパイラルが起こることで、多くの企業や団体で多かれ少なかれ、意志決定のシニアシフトが起こっています。政治における「シルバーデモクラシー」は企業や経営においても、確実に広まっているといえるのではないでしょうか。
若者を軽く見ていると本当に危ない
こうやってみると、消費の文脈で乱造される「若者の○○離れ」の正体は、社会や大人たち、あるいは組織や経営側が、若者から離れていくような判断を積み重ねてきた結果かもしれません。短期的には極めて合理的で妥当な判断を積み重ねているようで、中長期的に見ると、知らず知らずのうちにその意思決定はシニアシフトしてしまっていないでしょうか。
人口動態の変化によって、組織形態のあり方も、これまでと同じ概念や慣習では立ち行かなくなるおそれがあり、それは若手や中堅社員のみならず、管理職や経営など組織全体にかかわる問題になっていくでしょう。政府の掲げる働き方改革に通底する概念である「一人ひとりの事情に応じた多様な働き方の実現」の促進に向け、今後さまざまな規制緩和や、組織運営の方法論の多様化が進行します。そうすると、若手はこれまで以上に多くの労働条件の差異を、自分事として精査したうえで職場を選ぶようになるかもしれません。
企業側においても、新卒一括採用廃止に象徴されるような、リベラルで流動性の高い組織運営や人事制度にシフトしていくプレーヤーも増えていくでしょう。その結果、若手に選ばれる職場と選ばれない職場の格差が広がる可能性は十分にはらんでいるといえます。
人口動態の変動という前提の変化に対応しないことによって知らず知らずのうちに「組織の若者離れ」を起こす可能性が、どんな企業にもある時代だからこそ、「前からそうだったから」というような“前提は変化しないという前提”で物事を考えるのではなく、「それはどのような意義や価値のある制度や仕組みなのか」を見直し改善していくこと。それが、若手にまつわるトピックのみならず、激変の時代に生き残る組織であるために、必須なのです。
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