「IoT」の絶対にやってはいけない"落とし穴" なぜ家具にセンサーをつけてもダメなのか

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実は私にも苦い経験があります。

私たちが提供しているIoT製品で、「スマート宅配BOX®」というものがあります。インターネットを使って管理され、スマホの専用アプリで解錠できる宅配ボックスで、開発当初はこれをコンビニやアパレル店舗においてもらい、ネット通販で購入した商品の受け渡しを無人でできるようなサービスを想定していました。

新しい「宅配BOX」のニーズは意外な場所にあった!

一見便利そうなのですが、店舗の反応は「そんなものを導入したら店員の仕事が増えちゃうじゃない」というものでした。つまり、ネット通販とは業績が切り離されたリアル店舗の関係者にしてみれば、まったくメリットを感じられないサービスだったというわけです。

ところがニーズは意外なところにありました。海外で使える「グローバルWi-Fiルーター」のレンタルサービスをしている会社との打ち合わせの時、雑談でこの「スマート宅配BOX®」の話をしたところ、がぜん興味を持ってくれたのです。

上の書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。また、エスキュービズムでは10月18日(火)、六本木ミッドタウンホールで「IoTカンファレンス」を開催。ホリエモンをはじめ、IoTに詳しい経営者や専門家が集結! 私も登壇します。ご関心のある皆さま、ぜひご参加ください!

というのも、従来は海外に行く人がこのWi-Fiルーターを借りようと思ったら、空港のカウンターで、飛行機の時間を気にしながら、列を作って順番待ちをしなければならなかった。この状態を解決するためには、カウンターの業務オペレーションを改善することくらいしか方法がなかったのです。

しかし、「スマート宅配BOX®」を空港に設置し、事前にネットで予約してもらえれば、あとは利用者自身がスマホを使って無人ロッカーからWi-Fiルーターをピックアップしていってもらえるようになる。この「スマート宅配BOX®」の導入で、この会社の経営課題は一気に解決されることになったのです。最近では配送業者が荷物の再配達を減らすために、駅に取り置きロッカーを設置することが増えてきました。

これは配送業者の「再配達が多いとその分人件費がかかって利益が減ってしまう」という経営課題を解決できるシナリオがあるからこそ導入が進んでいるのです。

モノにセンサーを付けて、こんなサービスをしたら便利になるな――という程度の発想では、そのIoTビジネスは上手くいかない可能性が高い。それを使って企業の経営課題を解決できるか、そしてしっかり収益は上がるのか。そういった視点を忘れてはならないのです。

武下 真典 エスキュービズム取締役

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たけした まさのり / Masanori Takeshita

たけした・まさのり 1979年生まれ。大阪大学工学部卒業後、フューチャーアーキテクト入社。2008年エスキュービズム入社。小売りや外食産業の経営課題を解決するIT製品を数々リリースし、eコマースや店舗スマートデバイス部門のパッケージ導入数で業界シェア№1を獲得。2014年より現職。

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