「IoT」の絶対にやってはいけない"落とし穴" なぜ家具にセンサーをつけてもダメなのか

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コマツは建設機械にセンサーやGPS装置を取り付け、顧客に販売・リースした後も通信衛星回線や携帯電話回線を通じて、機械の位置情報から油圧・燃料の量といったコンディション、稼働状況までを把握できるようにしました。コマツはこの仕組みで世界中の建設機械から送られてくる情報をデータベース化することで、機械の故障をいち早く察知して迅速なメンテナンスを可能にしましたし、近い将来の地域ごとの需要の推移予測ばかりか、建設機器の盗難防止まで出来るようになりました。

しかし、だからと言ってやたらとモノにセンサーをつければいいというわけではないのです。

なぜ「モノにセンサーをつけてはダメ」なのか

例えば、家具メーカーの社長が「おい、わが社もこれからはIoTだぞ」と新規事業担当者に檄を飛ばした瞬間、どうなるでしょうか。おそらくその担当者は「家具にセンサーを付ける」ことを想像するでしょう。でも問題は、「そのセンサーが家具メーカーのビジネスをどう変えるか」、です。

家具の組み立て工数が半減されるとか、あるいはちょっと非現実的ですが、その家具を買った家庭では家族団欒の時間が増えるとか、そういう画期的な変化が期待できるでしょうか? そしてなにより、その家具メーカーの収益に貢献することになるでしょうか?

そうでないのなら、センサーを付けた分だけコストアップになってしまい、マイナスの効果しか生みません。

要は、モノにセンサーを付けただけではビジネスに何の効果も生まれないのです。コマツが建設機械にセンサーを付けて成功したのは、IoTという仕組みがコマツの事業課題の解決や新たなビジネス変革にうまくはまったからです。そこを勘違いすると、さきほどの家具メーカーのような悲劇に襲われることになってしまいます。

企業はそれぞれ多くの経営課題を抱えています。そしてこれまで、様々な仕組みの導入でその課題を解決してきました。例えばERP(統合業務パッケージ)を導入するとか、最新の会計システムに切り替えるといった方法です。

いま抱えている課題も、従来の方法で解決できるなら、それで対応すればいいのです。しかし「従来の解決法では解決しない、もしかしたらIoTという枠組みなら解決できるかも」というときにIoTに取り組んでみる。そういう発想のほうが、「とりあえずうちも製品にセンサーを付けてみようか」という発想よりも自然だし、成果を上げる可能性は格段に上がります。

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