われらが東大の学術研究講座に拠出する理由

民間最大級の研究基金、仏「アクサリサーチファンド」代表に聞く

――AXAリサーチファンドの支援にはどんな特徴はあるのか。

富める個人が社会に還元する寄附ファンドは多いが、企業として世界規模で研究支援を行っているファンドは少ない。また、企業による支援ファンドであっても、国や地域が限られているものも多く、選考プロジェクトのエリアが限定されていると研究成果の質が世界レベルに届かない場合もある。

アクサはグローバル企業であり、このような世界的な学術研究支援はグローバルな保険ブランドであることを証明する上でも重要である。世界レベルの研究者をグローバルに支援し、新たな知見を活かして世界の人々をプロテクトする(保障でお守りする)ことは、保険会社の使命と一致する。

AXAリサーチファンドによる支援は、アクサのコーポレートフィランソロピーの一環であり、アクサが世界的に進めているCR(コーポレートレスポンシビリティ)戦略やイノベーション戦略、企業市民として地域に根ざして営むコアビジネス(保険事業)をサポートする取り組みである。R&Dのような研究支援に加え、開発を視野に入れたファンドが多い中で、基礎研究に特化したファンド(アカデミックフリーダム)であることも大きな特徴だ。

――今回の支援はどのようにして決まったのか。

東大への支援は125万ユーロ、日本円では約1億4000万円。年25万ユーロで5年間にわたり拠出するが、1年あたりの拠出金額としては、AXAリサーチファンドとして過去最大規模になる。

2010年に前任の代表であるアンジュリエット・ハーマンが日本での支援先の応募開始にあたって来日した際、東京大学を訪問したことが契機となった。AXAリサーチファンドは、世界中の大学や研究者に応募を呼びかけている。アジア、アフリカ、欧州、南米、北米など世界各地から優れた数多くのプロジェクトがエントリーされ、社外の有識者で構成される科学委員会で厳正な審査を経て支援プロジェクトが選ばれる。応募案件の中から選考されるプロジェクトは全体の13%程度だ。井上氏の研究は、東大の渋谷教授から推薦を頂き、イギリス、フランス、ドイツなどとの激しい競争を勝ち抜いて選ばれた。

――井上教授の研究はどのように行われるのか。

健康寿命や高齢化は世界的な課題であり、ライフリスクの中でも特に力を入れている中心的なテーマである。日本は高齢になっても健康でアクティブな生活が出来る社会の構築を目指しており、健康寿命、平均寿命ともに世界一で、高齢化対応のお手本になる国であり、井上教授の研究に注目が集まっている。

加齢にはブループリントがない。選考して支援している研究者によれば、人間の場合、ある年齢を超えるとメンテナンスシステムが機能しなくなって疾病につながっているとの見方がある。生物の中にはメンテナンス機能が再生して、高齢化を防ぐ機能を持っている種があることがわかっている。メンテナンスシステムの再生プログラムを解明する研究が、人間の加齢を遅らせる研究、あるいは健康寿命を延ばす研究にも結びつくことが期待されている。このような研究は社会的に意義があり、保険会社のバランスシートにとっても寄与するものだ。

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