問題は、与党の方針であり、安倍首相の考え方だろう。ここで難しいのは、安倍首相が黒田総裁をホンネではどう評価しているのかだ。
ホンネはともかく、当面は、黒田日銀総裁を信頼しているという態度を取らざるを得まい。今の段階で、黒田解任や交代を少しでも臭わせると、「不測の円高」といったありがたくない事態を引き起こしかねない。
一方、これまでの経緯を振り返ると、当初順調に推移すると思われたアベノミクスが大きく失速した原因は、2014年の消費税率引き上げだったが、これを決定する時、黒田総裁は消費税率引き上げに対して明確に前向きだった。
この判断を今評価すると、「黒田さんは甘かったし、それは財務省出身だったからではないのか」ということになるのだが、安倍首相の側から見ると、「財務省出身の黒田に騙された」という感覚を持った可能性がある。
黒田再任の可能性は高くないが、「一芝居後」なら有り?
気の早い話だが、私見では、黒田氏の後の日銀総裁に黒田氏が再任される可能性があまり大きくないのではないかと思う。さりとて、現段階では、別の適任者がいるとも思えない。
自信を持って言えることは、緊縮財政を指向しやすい財務省出身者だけは日銀総裁に不適格だということだけだ。インフレ目標達成前に、消費税率引き上げを絶対に行わないことが日本の経済にとっては死活的に重要だ。
とは言っても、民間ビジネスパーソン、或いは学者などに、「日銀総裁」の重みに似合う人材が見当たらないことが悩ましい。
筆者の個人的意見としては、黒田総裁に、「2014年に消費税率を引き上げてもいいと考えた、私(=黒田総裁)の判断は自分の大きな判断ミスだった」と世間に向かって自己批判させた上で、彼を再任するのがいいと思う。
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