そして、イールドカーブ・コントロールと量的質的緩和の継続条件として、オーバーシュート型コミットメントが新たに採用された。
従来までのいわゆるマネタリーベース80兆円規模での拡大は政策目標ではなくなる代わりに、金融緩和を継続する条件として、日銀は「コアCPI(消費者物価指数)で2%のインフレ率が実績ベースで安定的に推移する」という、より高いハードルを掲げている。
従来は2%インフレ目標達成の判断が曖昧だったが、2%インフレを一定期間上振れさせることを明示することで、緩和解除のハードルを高めたということである。現行の金融政策の目的は2%の物価目標安定にあるが、その実現に時間がかかっていることを踏まえ、より強く2%インフレ実現を早期に実現するということである。このコミットメント採用は、金融緩和強化と評価できる。
日銀は「より高い目標」を設定した
一方、市場ではマネタリーベースが操作目標ではなくなったため、「量の限界」が訪れつつあり金利政策へのシフトを余儀なくされた、という表層的な理解が多い。
声明文において「あと1年強でマネタリーベースの対名目GDP比率は100%(500兆円)を超える見込みである」と言及されたこともあり、一部ではこれが日銀のバランスシート規模つまり「量の限界」との解釈がなされた。そうした憶測から、今回の政策変更について、近い将来量の限界が訪れ、テーパリング(資産購入の削減=緩和縮小)が始まるとの見方が散見される。
確かに、声明文の文言が、誤解を招きかねない点があったかもしれない。だが、上記の500兆円のマネタリーベースは、現行の1年あたり80兆円規模の資産購入が続く上での機械的な試算に過ぎない。
10年国債金利をゼロに誘導するイールドカーブ・コントロールを実践するには、これまでどおり日本銀行が国債購入を続ける必要があることには変わりない。実際に、年間80兆円規模での国債購入が続くことは明記されている。より重要な点は、「2%インフレ率をオーバーシュートする」という高いハードルを自ら新たに課して、強力な金融緩和を続けるということである。
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