「日銀の金融緩和は限界」は全くの誤解である アベノミクス擁護派は日銀総括をどう見たか

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金融緩和がしっかり機能していた2014年初頭までのように、2%に向かって多少インフレ率が高まっても、10年国債金利をゼロ近傍に安定させ続けるために、日銀はこれまで以上に国債購入を拡大させる可能性が十分ある。これを正確に理解すれば、今回の日銀の政策フレームワーク変更が、量的金融緩和の手じまいが前倒しになることを意味しないことは明らかである。

筆者は全く同意していないが、債券市場などでは「2%のインフレ実現は不可能」との見方が根強い。ただ、もしそれが正しいならば日銀による現行ペースの大規模国債購入は永遠に続くということだから、量の限界はまだ遠いということになる。つまり、「量の限界」が近いのでテーパリングが近いとの認識は、「早期に2%インフレが実現する」という想定が前提になるはずだ。

一方筆者は、将来の2%インフレの実現を予想しているが、2%インフレにはまだ距離があるため、量的金融緩和縮小は当分予想されないとみている。

「ドル円100円割れ」の可能性は一段と小さくなった

為替市場では、21日の金融政策決定会合後にドル円は102円台半ばまで円安に動いた後、海外時間にかけて100円前後まで円高に動いた。再び円高に動いた要因は、日銀の政策フレームワーク変更が、量的金融緩和拡大の変更という解釈が広まったことが一因とみられる。

日銀の政策変更が分かりにくかったという意味で、アナウンスメント効果は働かなかった。また、日銀の政策への失望で100円割れの円高になるという一部の為替アナリストの事前予想も影響していたかもしれない(筆者は根拠がない見方と認識しているが)。

実際には、今回の政策変更が金融緩和強化であり、2%インフレの早期実現を通じて、過去1年低下していたインフレ期待の転換につながると筆者は考える。FRB(米連邦準備理事会)による12月利上げの可能性が一段と高まっていることもあり、ドル円の100円割れの可能性は一段と小さくなったとみている。「行き過ぎた円高は早晩終焉する」、とのこれまでの筆者の予想は変わらない。

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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