32歳高年収女子、婚活市場の相場観を知る 東京カレンダー「崖っぷち結婚相談所」<8>
このような屈辱を味わったことなど…
最近の杏子は、度重なる失態に打ちのめされ、本来の自信を失っていた。正木からは意外にも「好き」という言葉を引き出したが、その後の行方は不安であった。
というのも、一度目のマッチングで「また、ぜひ」と温和な笑顔を浮かべていた飯島には、知らない間に嫌われていたし、元カレの知樹は同期の由香とデートをしている。杏子は、このような屈辱を立て続けに味わったことなど、32年の人生の中で、本当に一度もなかったのだ。
学生時代も社会人生活でも、杏子はいつでも勝ち組サイドにいた。「どうしてそんなに綺麗なの?」と、周囲からは羨望の眼差しを受けながら、受験も仕事も難なくこなす。そして、切磋琢磨と努力を重ねる人間たちを、高い空の上から見下ろすように格下の人種だと決めつけ、余裕の人生を歩んできたのだ。
そんな勝ち組人生に違和感を持ち始めたのは、アラサーに突入してからだった。


















