32歳高年収女子、婚活市場の相場観を知る 東京カレンダー「崖っぷち結婚相談所」<8>

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「杏子さん、2回目のオファーを貰ったのは良かったと思います。しかし、ここで調子に乗らないでください。試合は始まったばかりですよ。あなたは、単に今までベンチにいただけなんですから」

「失礼な……」。この直人という男は「婚活を全力でサポート」という大義名分を掲げて、言いたい放題である。しかし、正木とのデートを控えた杏子は、本来の強気な姿勢を既に取り戻していた。

「あっ、直人さん。もしかして、散々いじめ抜いた私の婚活が軌道に乗るのが、寂しいんじゃですか? もし私に対して親心なんかが芽生えてしまってたら、申し訳ないことね」杏子は特別に優雅な微笑みを浮かべ、自慢の美脚をゆっくりと組み替える。たまには、嫌味の一つくらい投げたって良いだろう。そもそも、こっちは客なのだ。

「はぁ……。本当にあなたって人は……。まぁ、正木さんは、あなたのそういう所を“面白い”と思ってくれているようです。しかし、どうぞ初心を忘れずに。健闘をお祈りしております」

直人は大きな溜息をついた。そして、ふんぞり返って座る杏子に向かって軽く頭を下げ、カウンセリングは終了となった。何度も直人とのカウンセリングを重ねて来たが、杏子は初めて直人に「勝った」と実感し、上機嫌で帰路についた。

「今、何してる?」独身女の胸に響く、電話口の一言

「あ、もしもしー、杏子ちゃん? オレオレ、俺だよ――」。正木からの電話は、オレオレ詐欺のように始まった。前回と同じく、舌足らずの声が耳に響く。

「また会えるの、嬉しいよー。今度の土曜日の夜でもいい?場所は神楽坂でいいかなぁー?」

神楽坂?と、杏子はあまり馴染みのない地名を聞き、顔が歪んでしまう。自宅の神谷町からも遠いし、初デートならば、広尾や白金あたりで美味しいイタリアンやビストロに行きたかった。

「あ……、はい……、大丈夫です」

しかし、やはり直人の厳しい表情が頭をよぎった。恐らく否定してはいけない、そう思い、とりあえず正木に合わせることにした。

「杏子ちゃん、今、何してるの?」

杏子は、思いがけず胸がドキッと大きく高鳴った。電話越しで、男に「何してる?」と聞かれるなど、かなり久しぶりのことだった。

「え……、今は、筋トレを済ませて、シャワーを浴びたところです」

「へぇ、筋トレもするんだぁ。確かに、スタイルいいもんねー!俺も、今ケンジたちとフットサル終わったとこだよー。じゃあ、また前日に電話するねー」

正木はまたしても杏子の知らない人物名で会話を締めくくり、電話を切った。しかし、その後しばらく、杏子の胸には「今、何してるの?」という正木の言葉が響いていた。

正木との神楽坂デートは、果たしてどうなる……?!

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