32歳高年収女子、「モテ女テク」に悶絶した! 東京カレンダー「崖っぷち結婚相談所」<5>

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「ダメもとで誘ったのに、杏子が来てくれるなんて思わなかった。美人がいると男性喜ぶから、嬉しい♪」

そう微笑む由香のメイクは、かなり薄い。アイラインなど、ほとんど引いていないように見える。唇だけが桃色に潤っており、それが彼女の童顔と肌の白さを引き立たせ、まるで風呂上りの赤ん坊のように見えた。

「今日は、たまたまヒマだったのよ」。杏子は尖った声が出てしまったのを少し後悔しながら、二人で『ミクニ マルノウチ』へ向かった。

か弱いウサギのような女に好意を寄せる男たち

予想はしていたが、相手の男性陣は皆、明らかに由香狙いだった。医者や経営者と言ったハイスペックの彼らは、失礼でない程度に杏子や他の女性にも気遣いは欠かさなかったが、由香へのずば抜けた興味は手に取るように感じ取れた。

「由香ちゃんは、優しいんだね」

「由香ちゃんは、きっと育ちがいいんだね」

由香を褒めるときだけ、彼らはお世辞ではなく、うっとりと目を細めて彼女を見つめる。なぜ彼らは、か弱いウサギのような仮面を被っただけの、この悪女の本性に気づかないのだろうか。

由香はと言えば、特によく喋るでもなく、ヘラヘラと始終笑顔を浮かべているだけだ。「どんなタイプの男性が好き?」と聞かれても、「うーん…どうでしょう」と、中途半端に微笑み、答えを与えなかったりする。しかし男たちはそれぞれ、由香の無言を自分の都合の良く解釈するようで、やはり満足気に豪快に笑うのだ。

杏子は由香の観察に精を注いだが、「モテ」のセオリーは、やはり上手く解明することは出来なかった。

「杏子、気に入った人はいた?」

帰り際、由香に小さな声で耳打ちされた。その微笑みの裏には、「でも、皆私が好きだけど、ごめんなさいね」というセリフが隠されているように思えてしまう。

「うん…。でも私、お食事会ってやっぱり苦手で。数時間じゃ、あまり分からなかったわ」

「そうか…残念。あ、そういえば、私、知樹くんと最近よく連絡を取ってるの。杏子と別れたのは少し前だって聞いたけど、一応報告しておこうと思って。また女子会で近況アップデートしようね」

次ページピンクの似合う女にはかなわないのか
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事