iPhone7、日本で独り勝ちする決定的な理由 Androidは「消費者の投資」を保護していない

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しかし、もっとも大きな問題はそこではない……とも考えている。カメラだけでなく毎回発表される新機能に関して、やや醒めた目で見てしまうのは、高価なハイエンドAndroidスマートフォンを入手しても、その“鮮度”がどこまで保てるのか疑問を感じる場面が増えているのだ。筆者はアップルの独り勝ちが日本のスマートフォン市場にいい影響を与えるとは思っていないが、そうならざるを得ない状況も背景にはあると思う。

たとえば、Android 7.0 Nougat(ヌガー)に対応予定のXperiaシリーズを調べてみると、Xperia Z4以降ということがわかった。筆者はZ3を所有しており、まだ購入して2年も経過していないが、すでに最新OSプラットフォームへの道は途絶えることが決まっている。グーグルがNexusブランドで販売する“基本形”とも言えるAndroidスマートフォンも、Nexus 5X以降の対応だから、筆者が持っているNexus 5では使えない。

しかし、Nexusはもちろんだが、ソニーのXperiaなどは、これでも「相当に頑張って」アップデートしているほうだ。筆者が所有してるAndroid機で、一度もメジャーなアップデートが実施されなかった国産高級機種は少なくない。

旧機種になってしまうと、新機能が使えない

さらに言及すれば、Xperiaのようなアップデートに力を入れている大手メーカーの主力機種の場合でも、機種の世代がひとつ上がっただけで、おそらくはハードウエアに依存しないだろうソフトウエアベースの機能でさえ新機能が使えない場合がほとんどだ。先日、Xperia XZシリーズの記者説明会でも、同様の不満からディスカッションが紛糾した。

半年ごとにハイエンド、あるいはハイエンドに近い端末が登場することに対する不信感があるからだろう。具体的な議論内容については言及しないが、筆者はこの問題がAndroidプラットフォーム固有の問題だと考えている。

たとえば、ハードウエアと基本ソフトを両方とも自社でコントロールしているアップルのiOSとiPhoneには、こうした問題はない。もちろん、あらゆる過去のハードウエアで、すべての機能が利用できるというわけではない。しかし、その世代のハードウエアなりに新しいiOSと、新しいiOSに追加された標準機能の一部は利用できる。今年のiOS10で言えば、iPhone5以降に関しては(動作速度などへの不満はあるにしても)動作が保証されている。

Androidの場合、本流であるAndroidの開発に対して、各メーカーがチューニング(調整)を加えたり、独自機能を追加している場合がある。これらはその端末が発売される時期に合わせて作り込むが、大元のAndroidが更新されれば、再開発や再テストが必要になる場合もある。独自機能が大元のAndroidに反映されれば、再開発の手間はなくなるものの、機能の質に関してはコントロールを失ううえ、他社も同じ機能を活用可能になる。

ここでは「機能」と表現しているが、たとえばカメラの“位相差検出AF”など、ドライバーレベルにまで掘り下げての開発が必要な要素など、さまざまなところで調整が必要となり、毎回、大きくAndroid本体がアップデートするたびに、あらゆる固有機能について対応していくのは難しい……といった事情が考えられる。

何らかの解決方法はあるのかもしれないと思い、端末開発者とディスカッションする機会があるたびに話はしているが、なかなか色よい意見は戻ってこない。今後、さらにスマートフォン市場が成熟していく中で、消費者の投資保護という観点は決して外せない話題ではないだろうか。

これが2万円前後あるいは4万円前後の低価格~中価格モデルならば勝負の方法はあると思う。しかし、ハイエンド機種は高価であり、それなりに消費者の投資は保護すべきだろうと考える。

まずは、iPhoneから顧客を奪うだけの個性が必要だが、そのうえで投資保護、機能の継承性、最新OSに対応できるという安心感などがなければ、高級Androidスマートフォンの存在意義は、徐々に低下していくのではないだろうか。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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