アジア投資ブームでも下がり続ける金利
ちなみに、バーナンキ議長の分析では金融政策の影響については大きく取り上げられていない。多くのエコノミストと同様、同議長は政策立案者が人為的に金利を低く抑え続けた場合、最終的には需要が上向き、物価がハネ上がると考えている。つまり、物価が安定している場合、中央銀行に長期金利の低迷の責任はないという立場である。
実際、金融政策が世界の長期金利低迷の主たる原因だと考える投資家は多くないだろう。だからといって、超低金利の原因は中央銀行にはないとするわけにはいかないが、中央銀行が短期金利を定めたところで、たとえば量的緩和のようなポートフォリオ管理政策が若干影響する以外は、(インフレ調整済みの)長期金利にはほぼ何の影響も及ぼさないとするバーナンキ議長の直感については、私も同意するところである。
ただし、05年から状況は大きく変わった。金融危機が起こり、バーナンキ議長が考えていたことと、逆のことも起こった。
たとえば、中国を筆頭にアジア諸国への投資は再び盛り上がりを見せている。にもかかわらず、金利は世界的に05年時よりさらに低い水準になっている。なぜだろうか。
これについてはいくつかの説があるが、状況を満足に説明できている説は今のところない。ある説は、長期的な成長リスクが膨らむことで、比較的安全だとされる資産のプレミアムが上昇し、予備的な貯蓄がこれによって増えるとしている。
もちろん、08年の金融危機は、金融市場の変動性が比較的低かった「大平穏期」の支持者たちへの警鐘であった。今や、長期的な成長トレンドへの期待を支えることは難しくなっていることを多くの調査が示唆している。たとえば、技術の進化が加速しているのか、減速しているのかについても議論があるし、地政学的な勢力のシフトも先行き不透明感を引き起こしている。
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