日本の持続的成長には「3本目の矢」が不可欠 シュヴァイツアー仏政府日本担当特別代表が語る

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今回、日本の経済閣僚との懇談では「3本の矢」が話題になりました。フランスは日本の経済政策の成功を切に願っています。というのも、世界中が日本のような経済強国のダイナミズムの影響を受けるからです。ダイナミズムは世界へ伝播していきます。欧州は今日、かつて日本が味わったのと同じ試練に直面しています。日本の経験に学ぶことが「失われた10年」を回避する助けになるかもしれません。

――2月にモスクワで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、日銀の金融緩和策をめぐり、欧州の複数国の財務相から円安誘導との批判が出ました。

あくまでも個人的な意見として聞いていただきたい。私は仏政府のスポークスマンではありません。「3本の矢」は極めて一貫性があり、日本経済を立て直すためにふさわしいアプローチと考えています。デフレからの脱却、あるいはインフレに目標を定めるのは理にかなったものです。それを実現するために、一段の金融緩和を行った結果、過大評価されていた円相場が下落する。それは論理的な動きです。

一方、日本は財政赤字の問題も抱えています。政府債務残高の対国内総生産(GDP)比率は230%に達しており、継続的に赤字を増やす策は取れない。消費税率を10%に引き上げるのは妥当な策といえます。

しかし、景気後退期に財政を均衡させるのは非常に難しい。それゆえ、「3本目の矢(=民間投資を喚起する成長戦略)」が絶対に必要なのです。1本目の矢(=大胆な金融政策)には、成長に弾みをつける「ブースター」の役割があります。だが、持続的かつ効率的な成長も求められる。それを実現する手だてが「3本目の矢」です。

財政積極姿勢に転じたフランスに「時限爆弾」はない

――英エコノミスト誌は昨年、「フランスは欧州の中心にある時限爆弾」だと伝えました。独大衆紙ビルトも「フランスは新たなギリシャになるのか?」というセンセーショナルな見出しをつけた記事を掲載しました。仏経済に対する不安が周辺国で高まっているようです。

2つの記事は誇張されており、実体を歪めた形で伝えているように思います。
 仏経済は確かに望ましい状態ではありません。2013年の経済成長率見通しはゼロ近傍。失業率は10%近い。経済的にも、社会的にも受け入れがたい状況です。だからこそ、本当の挑戦が必要なのです。

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