「日本人の円売り」が出れば、一段の円安に みずほコーポレート銀行マーケット・エコノミスト唐鎌大輔氏に聞く

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量的緩和は民間銀行が日銀に保有する口座(準備預金)の資金を増やしているだけで、この時点では銀行券は発行されない。銀行券が増えるのは、実際に民間銀行が日銀に対して準備預金の引き出しを申請する時で、それは、一般の預金者が民間銀行から資金の引き出しをすることで起きる。したがって、景気が良くなって、個々人がおカネを使いたいと思わなければ、銀行券(おカネ)は印刷されない。「金融緩和でおカネがじゃぶじゃぶ」という表現は誤解に基づくものだ。

いま実現しているのは、圧倒的な規模の量的緩和を受けて、市場が期待先行で円売りを進めているというルートだけである。理論的に想定される「銀行貸し出しの増加→マネーストックの増加→物価上昇→通貨下落」というルートではない。したがって、理論的には物価上昇は起きない。

ここから先、そうした現実が見えてきて、日銀は修正を迫られると見ている。例えば10月に日銀は「展望レポート」(「経済・物価情勢の展望」)で、物価の見通しを示すが、その時点で2%が程遠いと判明したらどうするのか。そこで新たな追加緩和の手を打つのか。国債はこれ以上は買えないので、追加の手としては、株や不動産を日銀が買うくらいしかない。しかし、ETFやREITも日銀が池の中のクジラになりつつあるので、新たに組成するという話になるのだろうか。

6月以降の日銀短観に注目すべき

――今後、注目しているイベントは何ですか。

6月以降の日銀短観に注目している。大企業製造業の業況判断DIは非常に重要だ。3月の短観ではまだ、為替の想定レートが、1ドル=85円だった。企業は断続的に為替予約を取るので、加重平均した持ち値がやや円高気味となっており、そこから保守的に設定される想定レートはさらに円高になっている。このままの円安ペースが続けば、6月の短観では想定レートが1ドル=90円に乗ってくるだろう。

ここで、3月の短観では減ることになっている設備投資計画がどの程度増えてくるのかも注目点だ。いまのところ、実体経済へのプラス効果として確実に見えているのは、円安によって企業の海外収益が円建てで膨らむことだけだ。国内で設備投資が増えないと、生産が増えないし、雇用増にも結び付かない。

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