日銀短観にみる自動車業界の慎重さ 円安でも、先行き見通しで「悪化」を見込む理由
4月1日に日銀短観(調査対象1万社超、年4回実施))の3月調査(回答期間は2月25日~3月29日)が4月1日に発表された。アベノミクス効果でムードが好転する中、企業の業況判断がどれくらい変化するかが注目されていた。大企業の最近の業況判断DI(「良い」-「悪い」)はマイナス8(12月調査はマイナス12)と3期ぶりに改善した。一方、中小企業のDIはマイナス19と前回よりも1%ポイント悪化した。
業種別では大企業製造業で自動車の最近のDIがプラス10(前回はマイナス16)と大幅な改善が目立った。2月にはトヨタ自動車が円高修正と販売台数の増加から13年3月期の業績予想を上方修正しているように追い風ムードは強い。一方、先行きのDIはマイナス2と悪化を見込んでおり、5期連続の悪化見通しだ。ただ、過去のデータを見返すと自動車の最近のDIが前回調査の先行きのDIを上回ることが多いという”クセ”があり、先行き見通しに慎重な業種ともいえる。逆に小売業では最近のDIが前回調査の先行きDIを下回ることが多く、「先行きについてやや強気な見方をする傾向がある」(日銀レビュー・2010年11月)とされている。
自動車の慎重さは為替見通しにも見て取れる。今回の調査で全規模・製造業の13年度の事業計画の前提とする為替レートは85.93円だった。調査回答期間(2月25日~3月29日)の為替相場は91円~96円だが、さすがに急ピッチで進む足下の水準をそのまま前提にできないということだろう。これに対し、自動車は84.47円と業種別でみて一番保守的な前提だ。もっとも円安前提にしている紙・パルプの90.42円とは約6円の差がある。
今回の調査で新たに加わった2013年度の収益計画では全規模・製造業は売り上げが前年度比1.2%増で、経常利益は同9.5%と大幅な増益となっている。だが、自動車は売上高は前年度比1.2%減を見込み、利益も12年度の大幅増益見通しから一転して前期比2.7%減の減益見通し。大幅な増益を見込むのは電気機械の48.6%増や石油・石炭製品の63.3%増など、前期が減益見通しだった業種の回復部分が大きい。
日銀短観で集計していると収益計画は単体ベースのため、海外子会社などでの貢献は収益計画には含まれない。また、上場大企業の場合、12年度決算が未発表で13年度見通しも正式に公表していない段階のため、12年度見込みの水準からあまり予想を変えずに回答する傾向もあるとされる。円安効果で業績が上向く自動車業界の見通しが保守的に見えるのはこうした事情が大きいのだろう。それだけに、12年度決算を発表する5月に連結ベースで、どのような業績見通しを出すのかが注目される。
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