本屋の「文教堂」、アニメ・文具で打開できるか 筆頭株主が大日本印刷から日販に変わる意味

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日販は「Sta×2(スタスタ)」という文具売り場パッケージを2012年7月に導入。また、子会社のダルトンで雑貨の取り扱いを行っている。こうした文具・雑貨などの開発商品売り上げは、327億円で日販単体売り上げの約6%にまで成長した(2015年度)。ただし、この数年は成長ペースが鈍化、返品率が上昇していた。

「その点、文教堂は書店チェーンの中では文具・雑貨に強い。日販は、そこに着目して今回の資本提携に踏み切ったのでは」と業界関係者は指摘する。

文教堂は、約200ある店舗のうち3割強の店舗で文具の販売を行っている。文教堂社内に文具の開発仕入れを行う部隊を擁する。毎年のように既存店舗の改装を行い、文具取扱店を増やしている。日販から見れば、「Sta×2」の新たな販路としての期待は大きそうだ。

「アニメガ」でアニメグッズを開発・販売

文教堂の得意分野がもう1つある。それは「アニメガ」店で販売するアニメグッズだ。「アニメガは、出版社と協力してオリジナルグッズを開発・販売している。若い世代を中心にファンが多く、開店前に数百人の行列ができたこともある」(文教堂ホールディングス・宗像光英常務)。たとえば、昨年はアニメ「刀剣乱舞」関連グッズを発売したところ、入店整理券が必要なほどの盛況ぶりだった。

文教堂では、アニメを含むグッズの販売を強化するため、本社隣のビルにグッズ開発の専門部隊を設置。自社開発商品の開発を強化している。

その効果もあり、2016年8月期営業利益は3期ぶりに黒字復帰を果たした模様だ。「既存の書籍・雑誌の販売減を文具やアニメガでどれだけ埋めることができるか。この数年は書籍・雑誌が減るスピードのほうが早かったが、今年になって文具やアニメグッズが収益貢献している」。宗像常務も、非「書籍・雑誌」路線への手応えを感じているところだ。

そして10月末、日販との資本業務提携。業務提携の内容は、「①文具・雑誌を始めとする複合商品の共同開発、②アニメ関連商品等のオリジナル消費・PB商品の共同開発及び展開」と開示されている。「提携の狙いは、書店業界全体の活性化(日販広報チーム)」。業界活性化のカギは、文具・アニメグッズなど非「書籍・雑誌」分野で、どれだけ魅力的な商品開発ができるかにかかっている。

広瀬 泰之 東洋経済 記者

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ひろせ やすゆき / Yasuyuki Hirose

経営コンサル、書店などの業界を担当。『会社四季報』編集長を経て、現職は同・編集部長

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